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資生堂、ブランド活性化でV字回復へ 中価格帯化粧品の売り上げ牽引
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資生堂が5月に発売する「ベネフィーク」のスキンケア製品。発表会でモデルの蛯原友里さんがアピールした=2月25日、東京都墨田区 資生堂の経営改善策が実を結んできた。2014年3月期の連結最終損益は従来の予想を40億円上回る190億円の黒字と、146億円の赤字に陥った13年3月期からV字回復を果たす見込みだ。
海外で事業の選択と集中を進めた成果が表れる一方、13年4月にマーケティング統括顧問として外部から招かれた魚谷雅彦氏が主導してブランド力の強化に努めた結果、国内では中価格帯の化粧品の販売が拡大した。同社は今後もブランド力の向上に取り組み、安定的な収益の確保を目指す構えだ。
国内向け化粧品を牽引(けんいん)したのはユーザーの好みや肌に合わせて美容部員が対面で販売するカウンセリング化粧品。このうち中価格帯(2000~5000円)の店頭売上高は13年10~12月期に「エリクシール」が前年同期比26%増、「マキアージュ」が7%増となった。5月には「ベネフィーク」ブランドのスキンケア製品を投入し攻勢を強める。
魚谷氏は統括顧問に就任後、各事業部長らによる「マーケティング改革本部」を立ち上げ、中価格帯ブランドの活性化に着手した。特に社内の意識改革に力を入れ、「全てがコミュニケーション」「全てがマーケティング活動」といった考え方が徐々に浸透。国内化粧品事業部のズナイデン房子マーケティング部長は「美容部員や販売会社、本社が結束力を強めることができた」と振り返る。
新たな試みも功を奏した。昨秋発売したエリクシールの新製品では「口コミで良さが伝わるような仕掛け」を展開。発売前にエリクシールの愛用者を招き、ブランド力強化の前提となる「商品の質の高さ」を体験してもらい、プロによる化粧品の使い方も伝授し、ファン層の拡大につなげた。この結果、販売計画と比べてこれまでに2.6倍の売り上げを確保した。
国内の化粧品市場は、08年秋のリーマン・ショック後に高価格帯製品と低価格帯製品への二極化が進んだ。特に中価格帯から低価格帯にシフトしたユーザーが多く、中価格帯の回復は化粧品各社にとって収益力改善の鍵を握る課題となってきた。
資生堂は、販売店に在庫を置かない新手法も導入。13年10~12月期の連結決算は、国内の化粧品全体が前年同期と比べて4.5%の伸びとなる中、同社のカウンセリング化粧品の売上高は9.9%増の473億円と好調で、課題の克服に一定の道筋をつけることに成功した。
ただ、スーパーなどの棚に置いて売るセルフ化粧品や日用品などは減収が続き、順風満帆とはいえない。また化粧品業界以外からの新規参入もあり、競争は激しさを増している。
4月1日には、1年前に兼任で社長に復帰した前田新造会長から魚谷氏が社長のバトンを引き継ぎ、新体制が名実ともに動き出す。魚谷氏の手腕の真価が問われるのはこれからだ。(兼松康)