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教育資金贈与信託 大手4行6万件突破、グループ連携で3世代取り込み
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祖父母から孫への教育資金の贈与が非課税になる制度を活用した「教育資金贈与信託」の契約数が2月末までに、三菱UFJ信託銀行など大手信託4行の合計で6万142件となり、6万件を突破したことが7日、分かった。税制改正を受けて2013年4月に大手各行が販売を始めて以来、順調に伸びており、契約額は4行の合計で4000億円を超えた。教育資金贈与信託は新たな顧客の取り込みにもつながっており、非課税期間が限られることもあって各行の競争は今後さらに過熱しそうだ。
「孫の海外留学を機に教育資金贈与信託を利用したいのだが、どうすればいいのか…」
三井住友信託銀行には進学シーズンを控え、こんな相談が増えているという。本店営業部(東京都千代田区)の営業担当者は「お孫さんの祖父母だけでなく、親権者である両親からの相談も多い」と話す。
教育資金贈与信託は、教育資金として贈与する場合に、30歳未満の孫や子供1人当たり1500万円まで贈与税が非課税になる制度に対応した金融商品。13年4月から15年12月末までの贈与が対象になる。
昨年12月末の段階で三菱UFJ、三井住友、みずほの各信託銀行と、りそな銀行の大手4行の合計で累計の契約件数は5万2765件と5万件を突破。金額も3500億円を超えていた。「初年度は2500件の契約を見込んでいたが、2月末までに計画の4倍を超えた」(りそな銀行幹部)といい、各行の契約は当初計画を上回るペースで伸びている。
教育資金贈与信託の販売が拡大している背景には、15年1月に基礎控除額が引き下げられて相続税が実質的に増税されることを控え、相続税対策の関心が高まっていることもある。みずほ信託では、1人の顧客が20人以上の孫やひ孫に対し、合計で1億円を超える教育資金贈与信託を契約した例もあるという。
ニーズを取り込もうと各信託銀行が力を入れるのが、グループ内の連携だ。三菱UFJ信託はグループの三菱東京UFJ銀行の窓口でも取り扱いを始めており、契約数の4分の1程度が三菱東京UFJ銀行経由という。みずほ信託は、みずほ銀行に相談員を派遣して教育資金贈与信託も含めた相続関連商品を強化している。信託免許を持つりそな銀行も、グループの埼玉りそな銀行や近畿大阪銀行の店頭で教育資金贈与信託を取り扱っている。
「教育資金贈与信託の販売拡大だけが、真の狙いではない」。大手信託銀行の幹部は、こう打ち明ける。
年金運用や資産管理を手掛ける信託銀行は、これまで高齢者など富裕層が顧客の中心だった。しかし、教育資金贈与信託は高齢者である祖父母だけでなく両親、孫と「3世代にわたる特殊な商品」(大手信託幹部)。関心が高まっている教育資金贈与信託を契機に、高齢者にとどまらず、これまで信託銀行が手薄となっていた年齢層に食い込むことを目指す。
実際、三井住友信託では教育資金贈与信託契約者のほぼ半数が、初めての取引という。同行は契約者を対象に遺言信託の手数料のほか、定期預金や住宅ローンの金利を優遇するなど、他の商品にも誘導するキャンペーンを繰り広げている。
関連商品の取り扱いは大手信託以外でも広がっている。13年6月に三井住友銀行が教育資金贈与の非課税制度を活用した預金商品を発売した。孫名義の預金口座を設けて資金を管理し、通常の普通預金と同じように金利がつく商品だ。さらに地銀の参入も相次いでいる。
1500兆円規模に達する個人の金融資産のうち、6割を高齢者が保有する。教育資金贈与信託の契約が今後も伸び、高齢者の資産が教育資金として使われることになれば、消費拡大を後押しすることにもなりそうだ。(大柳聡庸)