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【野村HD研究】(17)M&Aとトータルなソリューションビジネス

ニュースカテゴリ:企業の金融

【野村HD研究】(17)M&Aとトータルなソリューションビジネス

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近年、日本企業による海外企業の買収が増加している(出所)トムソン・ロイター  ■ますます高まるM&Aの重要性

 日本では少子高齢化にともない、中長期的に国内市場が縮小していくといわれている。一方で、日本企業の現預金残高は2013年3月末で過去最高の約225兆円を記録。こうした中、日本企業による海外企業の買収が今後も活発に行われていくとみられる。12年のクロスボーダーM&A(合併・買収)における買収国ランキングで、日本企業は英国を抜いて世界第2位に躍り出た(トムソン・ロイター調べ)。野村ホールディングス(HD)のM&Aアドバイザリービジネスと、それに付随した資金調達や為替・金利ヘッジなどトータルなソリューションを提供する取り組みについて解説する。

 ◆グローバルな体制

 「日本では90年代後半から、M&Aを通じた事業再編や海外企業の買収案件が増えてきました。国内市場の縮小にともない企業が成長機会を模索する中、新規分野への進出や海外市場への展開を進めるうえで、M&Aの重要性がますます高まっています」と、野村証券企業情報部の角田慎介部長は語る。

 同部では、M&Aにかかわる全般的な支援およびディール成立に向けたコーディネートなどを行うアドバイザリー業務を手がける。東京では、セクター別のカバレッジ体制と、地方の優良企業を担当するチームによるカバレッジ体制を敷く。大阪と名古屋にも拠点を持ち、地域を横断したM&Aのカバレッジ体制をとる。海外では各地域の特性に応じてグローバルにプラットフォームがあり、国内外の企業に付加価値の高いサービスを提供している。具体的には欧米亜を中心に重点を置くセクターや競争力を有するプロダクトに経営資源を配分している。

 同社は2013年、三菱重工業と日立製作所の火力発電システム分野での事業統合といった大型M&A案件で、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)を務めた。また、同年2月に発表された米ワーナー・ミュージックによる英EMIのパーロフォン・レーベルの米ユニバーサル・ミュージックからの買収など、クロスボーダー案件も多数手がけている。

 M&Aアドバイザリーには主に3つの役割がある。第1に、限られた時間の中で会社や事業を売買するM&A取引の指南役がある。適切な取引相手やスキーム、交渉戦略などの提案から企業価値・事業価値評価に関するアドバイス、案件全体のマネジメント、相手方との条件交渉のアドバイスまで、業務は多岐にわたる。

 第2に、経営陣が対外的な説明を行い善管注意義務を果たすための分析や助言、第3に、弁護士や会計士、税理士などのM&A実施に関わる各専門家のコーディネートがある。

 「当社は日本企業のM&Aニーズについて、最も熟知している1社と自負しています。加えて、クロスボーダー案件において質の高い仕事ができる体制も当社の強み。(08年のリーマン・ブラザーズの部門承継を含めて)当社が海外でも真剣にコミットしていく姿勢を見せていることで、世界各国から優秀な人材が集まってきています」と角田氏は話す。

 「日本企業M&Aリーグテーブル」で、野村HDは07年から6年連続1位を獲得した。(トムソン・ロイター公表)

 また、大型案件やクロスボーダーだけでなく、中小規模の案件も積極的に手がけており、事業承継を担う後継者の不在や事業再編、新分野への進出などで中小企業がM&Aを活用するケースも増えているという。

 ◆資金調達を支援

 M&Aのディールに付随し、多様な資金調達ニーズが生じることから、野村HDはM&Aとグループ傘下のファイナンス機能を組み合わせたソリューションの提供を行っている。

 その1つがレバレッジド・ファイナンス(被買収企業の資産やキャッシュ・フローなどを担保にして資金調達を行う手法)を中心とした買収資金の提供だ。通常のローンだけでなくメザニン(中二階)ファイナンスも提供できる点が強みだ。メザニンは、デットとエクイティの中間に位置するファイナンスで、劣後ローンや劣後債、優先株などミドルリスク・ミドルリターンの調達手法。2006年からコーポレート・ファイナンスを手がける野村キャピタル・インベストメント(NCI)が、国内市場を開拓してきた。

 野村HDは昨年12月、英国の資産運用会社インターミディエイト・キャピタル・グループ(ICG)と合弁で、日本国内におけるメザニン投資専業の新会社を設立。今年中にもファンドを立ち上げ、メザニン市場の活性化を目指す。NCIの船山浩一マネージング・ディレクターは、「日本最大のメザニン・ファンドになる予定です。投資家への魅力的なリターン提供を第一としながら、当グループの投資銀行ビジネスの提案力が一層強化され、さらなる案件開発につながるシナジー効果を期待しています。日本では、このようなミドルリスク・ミドルリターンの資金調達・運用手段はなじみが薄く、調達・投資手法の両面の多様化にも大きな意味があります」と語る。

 ◆変動リスクに対応

 同社リスク・ソリューション部の小池広靖部長は「M&Aのクロスボーダー化や、市場の変動リスクに対する顧客の問題意識の高まりから、M&Aディールでの為替・金利リスクに対するソリューションのニーズも拡大している。強固な顧客基盤を持つ投資銀行部門と高い商品組成能力を持つグローバル・マーケッツと連携し、クロスボーダーM&Aに向けたリスク・ソリューションを提供している」と話す。

 買収契約締結から決済までの買収に伴う費用の市場変動リスクに対応するための為替・金利ヘッジ戦略を立案。また買収後のバランスシートを見据え、デットおよびエクイティによる資金調達手段の最適化を検討する。契約締結後には適切な調達通貨や金利条件に向けた財務戦略の提案を行っている。

 小池氏は「投資銀行業務の差別化に貢献する付加価値の高いサービスを提供していきたい」と今後の抱負を語る。

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