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【Sakeから観光立国】攻めと守り実践 蔵元が生み出す「梵」

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【Sakeから観光立国】攻めと守り実践 蔵元が生み出す「梵」

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Sakeシンポジウムで講演する加藤団秀氏。海外の商標登録をはじめ輸出戦略に必要な手続きなどを解説した=4日、東京・丸の内の東京国際フォーラム  □平出淑恵さん(酒サムライコーディネーター)

 日本酒の輸出促進を目指す日本貿易振興機構(ジェトロ)主催の「Sakeシンポジウム」が4日に都内で開かれ、内外から多彩な講師陣が招かれた。輸出経験が豊富な蔵元として登壇したのは、加藤吉平商店(福井県鯖江市)の11代目当主、加藤団秀氏だった。

 昭和天皇の即位の礼で、当時の銘柄「越の井」が地方撰酒として初めて選ばれた。戦後も現在の「梵(ぼん)」が政府専用機や「APEC 2010」などの晩餐(ばんさん)会に使われ、24日には米下院の親日議員連盟の発足式で鏡開きに採用されるなど多くのVIPに愛飲された。IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)では10年に「チャンピオンサケ」に輝くなど、上位受賞の常連だ。

 梵の透明感と艶やかなうま味のある酒質は、多くの人を魅了する。蔵を訪問した際、その酒質を創り上げる姿勢に福井人気質を垣間見た。多くの設備が「加藤式」と記載された特注品。各工程で工夫を凝らし、酒は最低1年間の長期氷温熟成でうま味がのってから出荷する。

 加藤社長の飲む人を喜ばせたいという気概が隅々まで満ち、蔵に掲げられた「目指す感動の酒」の文字が輝いてみえた。梵はサンスクリット語で「本物・真実」、英語の「BORN」は「誕生」を表し、仏語の「ボン」は「素晴らしい」と訳される。

 華々しい海外プロモーションを精力的に行う加藤社長の気さくで気配りのある人柄は、海外の言葉や文化の壁を軽やかに乗り越えているように思えるが、一方では自社ブランドを守る惜しみない努力がある。

 梵は世界40カ国以上で正式に商標登録されている。ブランドを守るためとはいえ、徹底するのは大変なことだ。

 商標登録は今後、日本酒の国際化には不可欠となるが、小規模の蔵には大きな負担となる。

 「攻めと守り」。この真逆の事を実践している加藤社長がシンポで最後に語ったのは「大切なのは地元、地元のために役立ちたい、地元の誇りと思われる存在を目指す」ことだった。

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【プロフィル】平出淑恵

 ひらいで・としえ 1962年東京生まれ。83年、日本航空入社、国際線担当客室乗務員を経て、2011年、コーポ・サチを設立、社長に就任。世界最大規模のワインコンペティション、インターナショナル・ワイン・チャレンジの日本代表。観光庁酒蔵ツーリズム協議会メンバー、農水省ミラノ万博サポーター、乾杯SAKE学苑(台湾)校長などを務める。

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