ニュースカテゴリ:企業
メーカー
【視点】産経新聞編集委員・小林隆太郎 建設業の人手不足
更新
■外国人依存の前に抜本的対策を
建設業界で、震災復興と東京五輪開催に向けての需要増大で、資材不足と人手不足が深刻な問題になってきた。資材不足はまだしも人手不足は日本の技術劣化の問題も含め中長期の深刻な課題として急浮上。果ては移民計画が現実味をもって語られる状況になってきた。
■
震災復興の現場では「東京五輪の開催が決まってから、東京方面に引き揚げる職人など作業員が急に増えてきた」といった声があがっているという。被災地の復興現場は大変な事態に陥っている。そもそも、バブル崩壊以降、建設業の現場作業員は減少傾向をたどってきた。日本の建設業は国を代表する産業であり、戦後の経済成長を支えてきた。その就業者数も全産業で一番であり、ざっと700万人はいたといわれる。
だが、総務省の労働力調査によると建設技能者は2013年で338万人にまでに減った。ここでいう建設技能者とは、現場で鉄筋を組む鉄筋工やコンクリートを流し込むための枠をつくる型枠工、足場を組み立てるとび職などをいう。直近のピークだった1997年に比べ2割減だという。公共事業の減少などで建設業界のリストラが進んだためだ。前民主党政権が「コンクリートから人へ」などといって公共事業を大幅に削減したことによる。このため業者も減り、関連技能者も減った。
時代的にも建設業は人気がない。総務省や文部科学省の調査などによると、新規学卒者の建設業への就職者は、ここ10年は約3万人で横ばいが続いている。だが、80年代と比べると半分くらいの水準だ。全産業のうち建設業に就職する新卒者の割合も90年代の8%から2010年には5%にまでへこんでしまった。だから建設業の就業者に占める15~34歳の割合は、この15年間で3割から2割に減少している。
若い人たちにとっては、きつい仕事のわりに収入が特に高いわけではなく、「なんとなく敬遠したい」仕事・職業なのだ。ただ、50歳以上は多少割合を増やしているが、いわゆる団塊の世代といわれる65歳以上は急激に現場をリタイアしており、業界の高齢化にも限界がきている。要は、熟練の建設作業者が減ってきている。
そこで安直な議論として「外国人労働者の移入」が語られ始めている。国会などでも、建設業の人手不足を補うために、時限的な措置として、日本で技能実習を経験した外国人の再入国と3年間の滞在を認めるというものだ。
もう少し詳しくいうと、途上国の人材育成を目的とした「外国人技能実習制度」を利用して、建設分野で3年間の実習を終えた外国人が日本でさらに働くことを希望した場合、法務大臣が特別に「特定活動」に指定して、再入国と最長で3年間の滞在を認めるという内容だ。
さらには、「移民受け入れ」という議論まででてきている。産経新聞が3月に報じた「移民、年20万人受け入れ検討-政府、人口・労働力減に対応」というものだ。それによると、政府が移民の大量受け入れの検討に乗り出したのは、勤労世代の減少による経済や社会への影響が現実になり始めたため。試算では、2012年に8973万人だった20~74歳人口が、現状のままであれば、2110年には2578万人にまで減る。しかし、移民を入れれば7227万人に抑えられるとしている。
■
日本がいま人口減少社会にあることは否定できない現実である。労働力不足という日本の経済成長にとってアキレス腱(けん)となる問題にはもっと本腰を入れて取り組まなければいけない。外国人依存といった安易な対策は最後の最後にとっておいて、それ以前に抜本的な施策を考えるべきだろう。建設業を若い人たちにとってもっと魅力的な業種にして生産年齢人口を呼び込むことだ。介護産業にも同じことがいえる。
建設業界でも「なでしこ大工」という呼び名で技能労働者に女性を活用する運動を起こすという。女性活用も一策だが、若い人全体を引きつける官民あげての努力がまず必要だ。せっかくアベノミクスで景気回復軌道に入った日本の将来を考えての総合経済対策を「人材育成」という視点から考えていくことが重要ではないだろうか。