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【未来への伝言】小林健 三菱商事社長(上)危機こそ長期的信頼を得る好機

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【未来への伝言】小林健 三菱商事社長(上)危機こそ長期的信頼を得る好機

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ロンドン支店時代に足しげく船のオーナーを訪ねたイタリア・ベネチアでの小林健社長(中央)  貿易商社から資源や食料、化学など事業投資へと姿を変えた大手商社。三菱商事の小林健社長は「外部環境の変化に会社の形を変えることが大事」と強調する。船舶部門で幾多の危機を乗り越えてきた経験から得た教訓や新興国での国造りへの貢献、東日本大震災復興支援に向けた思いを聞いた。

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 《石油ショック以後の海運不況で1985年8月、顧客の三光汽船が戦後最大(当時)の倒産に直面。課長代理の立場で、その試練をどう乗り切ったか》

 「船舶事業はタイムスパンを10年とすると、1年が良くて残り9年が悪いのが常。当時は造船業が構造改革の最中で、(海運不況や円高不況など)たくさんの波をかぶった。商社の役割は船会社に代わり船を造るための資金調達。だから船会社が倒産すると船の引き取り手がない。商社までがキャンセル権を行使すれば造船会社がつぶれる構図。素早く引き揚げるのも手だが、雇用も大きく社会性があった」

 「造船会社は鉄鋼メーカーから調達した鉄を加工して船を作り、船会社は燃料油を調達し、荷物を集めてと多岐にわたる商売で、このチェーンが切れたときの影響が大きい。船を保有するのか、キャンセルか。貸し手がつぶれたので自分たちで担保を持ち、船を保有するとトップが決断し、何をすべきかが明確になった。ただ、大量発注で、次から次へと船が来て、3カ月で12隻くらいになり、往生した」

 《十数隻を引き取り、原価割れで定期用船に出したが、赤字が膨らんだ。その後、借金を返済できたのは10年後だった》

 「いわば『小さな船会社』を始めたということだ。担保割れの分は財務からお金を借り、船員を雇い、燃料は燃料部から調達し、社内を走り回って木材や穀物など貨物をかき集めた。船舶事業が好転するまで我慢してくれるのか不安もあったが、待ってくれる土壌にあったことは非常にありがたかった。苦労して10年くらいで負債は返し、次の悪い波の時は自社保有が良い結果になり、それが実は今の船舶事業につながっている」

 《危機を契機に資金調達機能から事業投資へとモデルを変えた船舶事業。昨秋の説明会で、成長分野に位置づけ、保有船を今の45隻から2020年に100隻に倍増させると打ち上げた》

 「船舶事業もそうだが、変動幅が高いものは、安く買って高く売るのが基本。だが、その通りにやれるプロはいない。所帯が大きくそれだけの資本力があれば、毎年コンスタントに買っていくことがいいと教訓になった」

 《1980年に31歳でロンドン駐在に。イタリアの船会社オーナーの元に足しげく通い、大型注文を相次ぎとり、顧客重視の原点を築いた》

 「通常の商売で相手の信頼を得るのはわりと簡単。一生懸命やればいい。お客やパートナーとの絆が一番深まるのは危機のとき。そのときにどういう行動をとったかが、後々まで心に残るし、長期的な信頼につながる」

 「人との信頼関係は大事で、やはり現場だ。英国から欧州、アフリカ、中東にも行った。当時の外国船のオーナーは個人が多く、簡単に言えば個人の大金持ち。ギリシャやイタリア、香港に点在し、一つのファミリーで何十隻という船を持つ時代。ちょっと他のビジネスとは肌合いが違ったが、その人たちから信用を得ることが大事だった。昨年10月にイタリア・ベネチアのオーナーと何十年ぶりに再会した。年をとり、代替わりしていたがファミリーがみんな集まり大歓迎してくれた」

 《当時は自ら危機を経験し、課題に立ち向かった。商社の事業が貿易から事業投資に変化する中で、若い世代の人材育成の要諦は何か》

 「最初から事業投資(の担当)にはなかなか行かせない。それぞれの部門で商品を取り扱う、いわゆるトレーディング(貿易)ビジネスがある。金属は資源投資ばかりではなく、メタルワンのようにお客さんに鉄鋼製品を売る商売もある。化学品もしかり。お客さんと対面することが大事で人とどう接するかが一番の勉強材料だ。貿易をある程度経験させ、並行してグローバル人材育成のために海外研修を半年から1年間、入社8年目までに行う。そこで大体社会人、商社パーソンとしてある程度形ができたところで、事業投資に入る、というのが今の(人材育成の)流れだ」

 「事業投資を担当し、最初から最高財務責任者(CFO)や経営なんてできるわけがない。実際のビジネスは違う。嫌な人はいるし、お金は貸してくれない、困ることはたくさんある。そのとき、自分でどう問題解決するかを経験させてから、担当させることが大事だ」

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【プロフィル】小林健

 こばやし・けん 東大法卒、1971年三菱商事入社。2003年執行役員、プラントプロジェクト本部長、常務新産業金融事業グループCEOなどを経て、10年6月から現職。東京都出身。65歳。

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