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【ITビジネス最前線】Upverter ハードウエア開発をオンライン化

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【ITビジネス最前線】Upverter ハードウエア開発をオンライン化

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 ■エンジニアチームがクラウドで協働

 「Upverter(アップバーター)」は、伝統的なハードのエンジニアリングをクラウド空間に持ち込むスタートアップだ。従来のデザイン自動化プラットホームや「AutoCAD(オートキャド=図面描画やアニメーションが可能な設計支援ツール)」によって作成されたコンテンツをめぐって、エンジニアチームがクラウド上でコラボレーションできる場を設ける。ブラウザ上で操作できる回路図キャプチャーやプリント基板設計レイアウトツールも同時に提供している。

 彼らは、従来はハードウエアエンジニアリング用ソフトが担ってきたオフラインのプロセスをオンライン化することで、エンジニアがどこにいてもリアルタイムで協働できる世界を目指している。

 ◆大幅コストダウン

 2010年にカナダ・トロントで創業、11年にはスタートアップ養成の米ベンチャー「Yコンビネーター」に参加し、趣味でハードウエア開発に取り組む人たちのための、クラウドソース型デザインプラットホームとして始まった。最近になって法人顧客獲得に力を入れるようになり、事業拡大のため200万ドル(約2億300万円)以上の資金を3月に調達した。

 アップバーターは「Github(ギットハブ)」のハードエンジニア用だと考えればいい。ギットハブはソフトウエアの開発者向けに、開発過程をトラッキングできるクラウドサービスを提供しており、人気が高い。物理的にどこに住んでいても、ソフトウエア開発者が互いの仕事を書き換えずに一つのプロジェクト上で協働できるからだ。ギットハブがピンとこない方のために説明するならば、アップバーターは回路図設計のための「Googleドキュメント」といったところだ。

 エンジニアリング企業は設計・開発専用ソフトウエアに1000万円以上を費やすことなどざらだが、こうしたソフトは古臭いオフライン型で、開発者が世界中に広がっている場合はもちろん、国内にいてもチームが協働するのは難しい作りになっている。

 これまで私が働いたことのある企業では、離れたところにあるオフィスが共通の内部ストレージシステムを利用できるようにするため、高価な2局間接続ラインを配備しなければならなかった。それを使っても、データを失うリスクなしに同じドキュメント上で協働することはできない。ビジネスのさまざまな過程がインターネット上に急速に移ったこともあり、古いやり方に慣れきって、新しいソフトウエアを学べなかったエンジニアリング業界や多くの専門家は置き去りにされてしまった。

 アップバーターがこの溝を埋めることに成功すれば、大きな利益が生まれる可能性がある。企業がソフトウエアに1000万円も投資している現状に鑑みれば、操業プロセスの効率化にその1割程度は投じると考えるのが妥当だ。そのうえ、1割の出費で、もしかしたら新しいソフトの購入や既にあるソフトの更新をしなくてよくなるかもしれない。

 ◆零細企業にも門戸

 科学データをめぐるコラボレーションを可能にするという点でアップバーターと似たサービスが「plot.ly(プロットリー)」だ。最近のトレンドとして、個人や部門ごとに孤立した「サイロ型」システムでは埋もれてしまうデータを、オンライン化しようという動きがある。ここでいうデータには、デザインや設計図も含まれる。プロットリーは主に数学的データをオンライン上で可視化し、プロフェッショナルがオンラインでデータを分析したり、質の高いグラフを作成したりできるサービスだ。

 アップバーターやプロットリーがトレンドウオッチの視点からおもしろいのは、伝統的には高価だったリソースをオンライン化することで、零細企業や主要市場外にいた専門家らがビジネスを始められるよう、市場を開いているところだ。個人が他のハードウエア開発者やハードハッカー(身近にある電子機器を改造して楽しむ人)らと知識を共有できる場を作ったアップバーターの出発点は、まさにそこだった。今でこそ法人顧客の獲得に動いているが、それは利益をもたらすのが法人だからに他ならない。当たり前だが、趣味で製作をしている人はお金をあまりかけたがらないのだ。

 もう一つの興味深い特徴は、これらの企業がクラウドソース型コンピューティングを可能にしていることだ。例えばプロットリーでは、エンジニアがAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じてデータを提出すると、プロットリーのプラットホームが美しいグラフを作成してくれる。これを伝統的な方法でやろうとすればCPU(中央演算処理装置)に大きな負担がかかり、通常、専門のデザイナーとデータ分析官が一緒に作業をする必要があった。

 ◆さらなる資金調達も

 単一の専門分野に特化した小規模なオンライン企業は、高価で過去の遺物ともいえるソフトウエアにとって、短期的にみれば利益になる。彼らが自社製品の有用性を高めてくれるからだ。しかし、こうした新しい企業がインターネットから置き去りにされた人々との溝を埋めることで、自社の製品だけでなく競合製品にとっても利益になることから、長期的には脅威になってくるだろう。

 企業が一つの高価なソフトにお金を一度つぎ込んでしまったら、他のものに替えることはまずないと思ってよい。ジャパンタイムズのデジタル事業に携わっていたとき、古くからの新聞編集システムが独占的なソフトウエアのエコシステムを築き、新聞社を囲い込んでいるのを目の当たりにした。インターネット上の全てのものが相互の互換性を推進している今、この戦いに勝とうと思っても難しいのが現状だ。

 アップバーターもプロットリーも、企業にとって脅威となるまでにはまだ長い道のりがある。法人市場で信用性を高めるのは容易ではない。そこで、法人市場に進出できることを証明するために、アップバーターには資金調達が必要だった。そして、もし法人市場で一定の成果が出れば、アップバーターは長期的にこの市場にとどまる意思を法人顧客に示すために、今回よりもずっと規模の大きい資金調達ラウンドを成功させなければならない。

 余談だが、ファイル共有サービスの「Box(ボックス)」がIPO(新規株式公開)に踏み切ったのもそのためだった。

 文:イジョビ・ヌウェア

 訳:堀まどか

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【プロフィル】Ejovi Nuwere

 イジョビ・ヌウェア ニューヨーク生まれ。全米最大の無線LAN共有サービスFON創業者のひとり。ビジネスウイーク誌により「25人のトップ起業家」に選出される。2008年に日本でオンラインマーケティングに特化したランドラッシュグループ株式会社を設立し、現最高経営責任者(CEO)。

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