ニュースカテゴリ:企業
サービス
【未来への伝言】小林健 三菱商事社長(中)アフリカなど新興国発展に貢献
更新
安倍晋三首相(右から3人目)のアフリカ外交に同行する小林健社長(左から3人目)=エチオピア 《安倍晋三首相に同行し、ミャンマー、カタール、トルコ、アフリカを歴訪したが、官民連携の意義は》
「アフリカは当社としても注力すべき地域だ。これまでの援助の時代から、インフラ、消費関連などのビジネスの時代になる。安倍首相からも声がかかり今年1月、コートジボワール、モザンビーク、エチオピアの3カ国に同行した。最近の首相ミッションは、現役の最高経営責任者(CEO)を連れて行くのが新しいスタイル。首脳会談後、産業界も加えた拡大首脳会談をやる。CEOが行くと、その場で即答できるし、いわゆる『会社に持ち帰り検討する』がない。投資環境で困っていることも直接言え、大使館も官僚も来ているから話も早い。官民で生の情報交換ができる点が有意義だと思う」
《アフリカでは中国が借款を武器に攻勢をかけているが、日本はどう存在感を打ち出すべきか》
「日本とつきあうことの良さをアピールすることだ。1978年ごろの話だが、当時一番下っ端(ぱ)だった私がコートジボワールとビジネスをやった話を現地で披露した。コートジボワールは自分で船を持っていないので外貨がどんどん出ていってしまう。船を持ちたいが、日本の円借款は船につかないので日本輸出入銀行(現国際協力銀行)のローンを使うが、頭金がない」
「そこでうちの食料部門に頼み、頭金相当分は主要産品のコーヒーを買って、残りは輸銀ファイナンスで賄った。何回かコートジボワールに来て、トータル5隻を契約した。日本と付き合うといい事がある。援助だけではなく、自国産業の強みを生かし、それを展開することを日本や日本企業はお手伝いしますよと。それが本当の経済関係ではないのかと申し上げた」
「完成した最初の船の名前は『ヤムスクロ』にした。コートジボワール(象牙海岸の意味)建国の父、ウフェ・ボワニ大統領が生まれた村の名前(現在も法律上の首都)だ。自分が手がけたこの船が今も航行しているのか知りたいと話をしたら、非常に感銘を受けていた」
《相手国・企業の意識も変わる》
「首脳会談後の拡大首脳会談の中でこの話をした。アフリカはどうしても、経済援助の話が中心になるし、コートジボワール側も日本はお金持ちだから首相が来て援助でお金をくれると思っている。でもせっかく日本の首相と企業トップがいくので、民間企業にビジネスの実績を説明させてほしいと頼んで実現した」
「こうしたビジネスの実例が相手国に非常に喜ばれ、安倍首相にはモザンビークでの演説の中で、当社が参画するアルミ製錬事業モザールの話をしていただいた。そこでは1000人の直接雇用、周辺産業を含めると1万人の間接雇用があり、輸出にも貢献している。日本の企業が進出するとこういう利点があり、官民協力の良い例だと思う」
「個別セールスの話は、あまりできないが、道路とかインフラは政府がやり、民間も別にやれることがあり、現にやっていることを相手のトップに分かってもらうのが重要だ」
《ミャンマーではティラワ工業団地やマンダレー空港の改修事業で、インフラ整備や国づくりに協力している》
「海外投資で重視している3つの原則がある。人口が多く、識字率が高く、日本に対して友好的であることだ。ベトナムやインドネシア、トルコ、ミャンマーもそうだ。ミャンマーもいよいよビジネスの段階に入ったが、一方で新興国の国攻めではパートナー戦略が重要だ。(ミャンマーの)SPAという現地のパートナーと包括提携し、不動産開発やエレベーター事業、三菱自動車と組み、アフターサービスも始めたが、将来は自動車の組み立てまでやっていきたい。一方で、投資環境整備や法律改正、インフラ整備は日本政府に対応していただきたい。官民の役割分担を明確にした上で、官民一体でやっていきたい」
◇
【プロフィル】小林健
こばやし・けん 東大法卒、1971年三菱商事入社。2003年執行役員、プラントプロジェクト本部長、常務新産業金融事業グループCEOなどを経て、10年6月から現職。東京都出身。65歳。