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【開発物語】プラスワン・マーケティング「フリーテル」

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【開発物語】プラスワン・マーケティング「フリーテル」

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フリーテルは4色展開。子供からお年寄りまで幅広く使えるデザインだ  ■格安「SIMフリー」 品質に磨き

 ≪STORY≫

 子供からシニアまで幅広く普及したスマートフォン(高機能携帯電話)だが「2年しばりの契約がわずらわしい」「契約プランの自由度が低い」「端末代や通信料が高過ぎる」など、不満も多い。そんな中、自由で安いスマホのあり方を提案するのが、プラスワン・マーケティングのSIMフリースマホ「freetel(フリーテル)」だ。

 国内で多く使われている「SIMロック端末」は、端末側に特定SIMカードしか使えないよう“鍵”が掛けられている。これに対し、「SIMフリー端末」は自由にSIMカードを差し替えて使用できる。

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 フリーテルは、他のSIMフリー端末と比べて格段に安いのが最大の特徴だが、携帯向け基本ソフト(OS)として世界で最も人気のあるアンドロイドを搭載し、両面にカメラレンズを配するなど機能面も申し分ない。同時に2枚のSIMカードが差せるデュアルSIM方式を採用。海外に渡航した際に現地の安価なSIMカードを利用して通信費が抑えられるのがSIMフリーの大きな利点だが、さらに日本国内で使っているカードも差したままにできるので、いつもの番号への着信も確認することができる。

 フリーテル開発のきっかけは、プラスワンの増田薫社長と大仲泰弘取締役が外資系大手メーカーに所属していたころまで遡(さかのぼ)る。

 2人はこの会社で日本でのスマホ事業立ち上げを担当した。中国の工場や国内外の見本市に視察に行くなかで、SIMフリー端末の存在を知るとともに、日本の通信業界がかなり異質なものであることが分かった。「多くの人が2年しばりの契約を結び、1億人超が大手通信事業者3社に囲われている。そして通信料が高い。通信技術で日本と同等か少し進んでいる韓国と比べても3倍の水準だ」(大仲取締役)。しかし、だからこそ日本でSIMフリー端末を売るチャンスがあると考えた。

 法人向け製品で強みのある会社だったため、早速、企業に営業をかけた。すると、少ない会社で1、2台、多いところで数千台のニーズがあることが分かった。集めれば何十万台と、通信事業者からの発注を超える台数だ。しかし大手メーカーにとって、少ない台数のためのカスタマイズに応えることは難しかった。

 そこに市場があるのにあきらめなければいけないのか。営業が頓挫(とんざ)した2012年8月、増田社長が言った。「自分たちでやるか」

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 それからわずか2カ月後にプラスワンを設立。新市場への挑戦が始まった。目指したのは「日本で最安値レベルの端末」「世界に誇れる日本品質」、そして「ユーザーに優しいメーカー」だ。

 通信事業者から発売される端末ではないので、事業者がメーカーに要求する機能やそれに関わる品質テストのコストがかからない。人件費の少なさはベンチャーならでは。必要な機能は残しつつシンプルさを追求し低価格の端末を実現した。安価なプランを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)のSIMカードを使えば、スマホ利用にかかるコストは最大で従来の5分の1程度まで削減できる場合もある。

 品質については「安かろう悪かろうでは駄目。品質は企業の屋台骨」(大仲取締役)と考え、国内大手メーカーで携帯電話事業の品質管理部門を率いてきた専門家4人を顧問に迎えた。顧問は製造を委託した中国・深センの工場に常駐し、品質向上に取り組んだ。

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 中国入りした顧問がまず手をつけたのは、工場周りのごみ掃除だった。「こういうところからちゃんとしなければ、良い品質のものは生まれない」からだ。工場側も、世界で最も厳しいとされるジャパニーズ・クオリティーの製品が出せれば箔(はく)が付くと、顧問の注文に積極的に応えた。

 工場内に設けられたフリーテルの専用ラインは、3カ月にわたって何も生み出さないラインとなった。作業プロセスを組み上げ、従業員の研修、テストを徹底するためだ。従業員は、基本のはんだ付けのやり方から教わった。満足のいく品質で安定して製造できるようにするため、発売を約1カ月遅らせた経緯もある。その結果、不良率は1%程度。顧問が一人で始めた掃除は、従業員みんなで取り組む日課になりつつあるという。

 また、フリーテルにCPU(中央演算装置)を提供しているスプレッドトラムは、携帯電話用チップで中国最大手ながら日本へは初上陸。日本市場進出の足掛かりにとの積極姿勢で、フリーテル発売前から現在まで技術者をプラスワンに派遣し、通信環境の試験を繰り返している。試験結果を反映し、通信性能はどんどん向上しているという。

 3つ目の「ユーザーに優しいメーカー」では、従来は電子機器に詳しい層しか知らなかったSIMフリーをエントリー層にも使ってもらえるよう、アフターサービスに注力した。アプリの入れ方が分からないというレベルの人にも基本から教えている。

 今や、フリーテルは国内のSIMフリー端末の中で最も勢いのある端末の一つとなった。購買しているのは、子供を持つ30~40代の夫婦や年金生活の老夫婦、海外出張の多い会社員、構内PHSに代わって安い通信手段を求める法人などと、層が厚い。

 増田社長は、今年はフルラインナップ戦略を取り、高速データ通信「LTE」に対応したスマホやタブレット端末、ポケットWi-Fiなどの幅広いジャンルの製品を最安値クラスで出していくと自信を見せる。

 通信業界では新興のフリーテルがどのように地歩を固めていくのか、今後が注目される。

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 ■“全員野球”でユーザーサポート

 ≪TEAM≫

 プラスワンは、増田薫社長と大仲泰弘取締役のほか、業務委託と派遣社員がそれぞれ1人ずつの計4人の少数精鋭部隊だ。その上、設立間もないベンチャー企業で、業務をアウトソーシングするにも資金的な限界がある。

 このため、社長も取締役も関係なく、あらゆる業務に4人で全力で当たる。フリーテルのデザイン画や中国からの輸送に使った梱包(こんぽう)材、通称「フリーテル段ボール」の設計も社長が自ら取り組んだ。説明書の作成や製品の外箱デザインもみんなで協力して進めた。

 外資系大手メーカーで上司・部下の関係だった増田社長と大仲取締役だが、実はその前にも国内のソフトウエア会社で同僚だった10年来の“戦友”。しかし、2人とも営業畑の出身だったため、デザイン・設計、輸送、説明書の書き方、会社のサイト運営、全て一から勉強した。

 大仲取締役は、家電量販店の店頭で、さまざまな電化製品の段ボールを見せてもらえるようお願いし、外箱に記入すべき事項を研究。同様に説明書についても、いくつも他社製品を購入して内容を学んだ。スマホだけでなく、ブルーレイディスク・プレーヤーやテレビなど、機械に弱い消費者も対象とした製品の説明書も参考にして分かりやすい説明を目指した。

 「社員一人一人が自分の頭で考えて、全力で動かなければいけない。大企業にはないこの緊張感が好きなんです」と大仲取締役は語る。増田社長とともに務めたソフト会社は在籍中に東証1部に上場したが、大仲取締役が入社したころは会社創生期。忙しくて家に帰れず、段ボールにくるまって寝る日も少なくなかった。大仲取締役は「そのころが一番楽しかった」と振り返り、「外資大手に転職したのに短い期間で飛び出して起業したのは、やっぱりそういう性分なんでしょう」と笑った。

 フリーテルが発売されて話題になっている今も、同社の“全員野球”の姿勢は変わらない。ユーザーから寄せられる質問メールへの回答や会社公式ブログでの情報提供などのサポート業務は全てに優先して全員で取り組む。「LINEってどうやって友達登録すればいいの?」「スマホゲームの攻略法教えて」など、フリーテルに直接関係ない質問でも、顧客のスマホライフ向上のためならできるだけ答えてきた。この真摯(しんし)な対応に、ネットユーザーの間では「SIM周りで分からないことがあったらプラスワンに聞け」と、“駆け込み寺”として有名になりつつあるという。

 「メーカーは購入後のアフターサービスはできるだけコスト削減したいと考えるのが普通だが、そこを大事にしていきたい。フリーテルを満足して使ってもらいファンを増やしていきたい」(大仲取締役)。大手ではできない製品・サービスを目指すチームの奮闘はまだまだ続く。

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 ■自由度高い通信契約 節約志向で脚光

 ≪MARKET≫

 消費税が5%から8%に引き上げられ、消費者の節約意識が高まっている。トレンド総研(東京都渋谷区)が、消費税増税後に節約したいと思うものについてアンケートを取ったところ、「食費」の47%に次いで、「携帯電話などの通信費」が45%を占める結果となった。

 さらに具体的な節約方法を聞いたところ、「不要なサービスを解約する」が49%で1位。そのほか、「通話無料のアプリを使う」(42%)、「通話を控える」(33%)、「Wi-Fi(ワイファイ)を活用する」(25%)などの理由が続いた。

 一方で、スマートフォン(高機能携帯電話)の料金について、希望の金額まで節約できると思うかを問うたところ、約7割が「節約できるとは思わない」と回答。節約志向は強いものの、あきらめムードが漂っているようだ。理由として、定額プランや基本料金が高いとの意見が上がった。

 そんな中、「SIMフリー端末」への注目が高まっている。仮想移動体通信事業者(MVNO)などが提供する比較的安価で自由度の高い通信契約で、同端末を利用して節約につなげることができる。

 アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」のSIMフリー版が昨年秋に発売されたことをきっかけに一般への認知も広がり、専門家の間からは2014年が「SIMフリー元年」になると指摘する声も多い。

 プラスワンのフリーテルは、「機械にはあまり強くなく、スマホは持ちたいけれど普段はメールくらいしか使わない」といった層もターゲットとし、こういったユーザー向けに購入後のサポート態勢を整えている。SIMフリーが、デジタル製品に精通し高度な使い方をするハイエンドユーザーだけでなく、広く一般に普及する上で、フリーテルの存在は一つの起爆剤となる可能性がある。

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 ≪FROM WRITER≫

 取材で、昨今の小学生はスマホを持っていないと「仲間はずれにされる」という話を聞いた。友達同士のおつきあいだけの話ではなく、学校の緊急連絡網をLINEでまわす時代なのだそうだ。スマホは子供にはぜいたくすぎると考えていたが、そういう環境にいるなら持たせないわけにはいかない。初めてのスマホとしてフリーテルを購入する親が多いのもうなずける。

 また、老夫婦がそろって購入するケースがあるとも聞いた。私にも足腰が弱って自分で出歩くのも難しくなっている祖母がいる。買い物が好きな人だったので、ネットショッピングができるようにとパソコンの使い方を教えようとしたことがあるが結局使いこなせず、渡したパソコンはほこりをかぶっている。その点、スマホやタブレット端末は直感的な操作で使うことができる。ひ孫の写真が見たければ、写真をかたどったアイコンに触れればいいのだ。

 フリーテルのスマホなら、渡してやっぱり駄目だとなっても金銭的な痛手は比較的少ない。家のWi-Fiを使えば通信料もタダだ。プレゼントしてみようかという気になっている。

 スマホが、あらゆる層に必要とされる段階に来たのだなと実感する取材だった。フリーテルのように、さまざまな人が自由に使える端末やサービスが増えることを期待している。(松田麻希)

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 ≪KEY WORD≫

 ■プラスワン・マーケティング

 「freetel(フリーテル)」 プラスワン・マーケティングが昨年11月に発売したスマートフォン(高機能携帯電話)。契約者情報などが記録されたSIMカードを自由に差し替えて使用できる「SIMフリー端末」。米グーグルの携帯端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載する。価格は1万2190円(税別)と国内最安レベル。SIMフリーでは珍しい豊富なカラーバリエーションも特徴で、ブラック、ホワイト、ピンク、グリーンの4色がある。

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