ニッポン株式会社の稼ぐ力が落ちている。為替相場は円安が続いているのに、輸出が伸びない。生産の海外移転もあるが、日本製品の国際競争力が落ちているからで、2013年度の貿易赤字は13兆7488億円と過去最悪だ。ニッポン株式会社の復活には、新たな稼ぎ手の登場が不可欠で、政府も起業支援・中小企業の活性化に力を注ぐ。そのための有力手段になり得るのが開放特許で、その周知と活用が急がれる。
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開放特許とは、大企業が保有する特許を中小・ベンチャー企業にライセンス契約や譲渡など有償で提供。中小企業は、大企業の知的財産を使うことで、時間やコストをかけずに新製品を開発できる。中小企業といえば、下請け部品メーカーとして大企業から送られてきた図面をみながら作るのは得意でも、独自製品の開発は不得手。開放特許は「脱下請け・自社ブランドづくり」を目指す中小企業にとって第2創業をもたらす有力な武器になりうる。
自治体も地元企業と大企業の連携を図る知財交流に積極的だ。開放特許を使った両者のマッチングで先行するのが川崎市。07年にモデル事業としてスタート、富士通や東芝、日産自動車など川崎市に研究開発・生産拠点を置く大企業が中小企業への技術移転に応じている。これまでに成約したのは17件、うち12件が製品化にこぎつけた。
今年も4月16日に川崎市産業振興会館で「川崎市知的財産交流会inビジネスリゾート2014」を開催、同交流会を通じてライセンス成約に至った中小企業2社が体験談を披露した。
精密板金業を営むスタックス(川崎市中原区)は、富士通の特許を活用し電子機器の免震台足「スウェイフット」を製品化した。星野妃世子社長は「(創業者である)父の時代から、下請けから脱して自社ブランドを作りたいと考えてきた。これが実現した」と、開放特許が親子2代の夢をかなえたと話した。その上で「下請けは親のいうとおり(の納期、価格、品質)にする。価格決定権はなくコストダウン要求に応えなければいけない。しかし、自社ブランドをもつと交渉できる力があることを知り、利益も違ってきた」と自社ブランドをもつ有効性を説いた。
「中小企業が元気になる」と指摘したのがシステム開発のアルファメディア(同)の小湊宏之社長。同社も富士通の開放特許を使って従来製品の高付加価値化を図り、売り上げを伸ばした。「知財を生かすことで他社と差別化できる。売れたことで社員のモチベーションも上がった」と話した。
脱下請けに挑む中小企業だが、ヒト、モノ、カネの経営資源に限りがあり、自社ブランドを一から立ち上げるのは難しい。だからこそ大企業の開放特許を活用しない手はない。10万件の特許をもつ富士通は「中小企業からニーズを求められると10万件の中から張り切って探す」(担当者)と特許の有効活用に理解を示す。
知財交流の場に参加すれば、これまで無縁だった特許も身近になり、製品開発のタネさがしに効果的だ。アイデアの宝庫から自社ブランドづくりに最適な知財を見つけて契約すれば、速やかに、かつ安価に必要な技術を入手できる。開発した独自製品は特許で守られているので競合との差別化が図れ、独占的にビジネスを展開できる。自社ブランドを製品化できるメリットは決して小さくない。
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日本経済の活性化には、成長意欲に富む若い企業、ベンチャー精神あふれる中小企業を育て、経済・産業の新陳代謝を促す必要がある。自社ブランドを構築できれば企業価値は高まる。社員のモチベーションも上がる。
ある地方銀行トップは「地方栄えずして国栄えず」と持論を展開し、地元経済を活性化させるため、中小企業支援に力を入れた。この言葉は「地方」を「中小企業」に言い換えることもできる。精密で高品質、安全・安心なニッポンブランドを支えてきたのは、どんな要求にも応えてきた中小企業の卓越した「技」だ。大企業の「知」が加われば、独自製品を世界にアピールできるはずだ。開放特許の活用が進めば、間違いなく日本のモノづくりは元気になる。