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【ハザードマップ】益田国際観光ホテル島田家、能登観光ホテルなおき

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【ハザードマップ】益田国際観光ホテル島田家、能登観光ホテルなおき

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 ■老舗の遺産にあぐら 資金繰り限界

 ▼益田国際観光ホテル島田家 天保年間(1830~44年)に創業した老舗旅館、益田国際観光ホテル島田家(島根県益田市)は4月1日、松江地裁益田支部から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は約3億2400万円。

 「赤い靴」「シャボン玉」などを作詞し、童謡詩人として知られた野口雨情が歌に詠み、1994年11月には天皇、皇后両陛下が宿泊されたこともあり、地域での知名度は高かった。観光客の宿泊や地元企業を中心とした宴会利用などで98年7月期までは2億円超の売上高があった。

 しかし、観光客数の減少に加えて、景気低迷の影響から宴会利用も落ち込み、売り上げは低迷。設備の老朽化も進んで客足が遠のく中、有効な顧客獲得策を打ち出せず、2013年7月期の売上高は約7000万円にまで低下した。

 金融機関からは経営指導や返済猶予の支援を得ていたが、業績の悪化に歯止めがかからず、資金の調達が限界に達した。3月末の決済のめどが立たず、今回の措置となった。

 ▼能登観光ホテルなおき 政府登録国際観光旅館で老舗の能登観光ホテルなおき(石川県七尾市)は、5月8日までに2回目の資金ショートを起こした。4月11日付で弁護士名で「ホテル事業を一時休業する」との告示を旅館に掲示し、休業状態に陥った。負債総額は金融債務を中心に約20億円。

 開湯から約1200年とされる能登半島の和倉温泉で、1875(明治8)年に創業した。温泉街を見渡せる高台に立地し、直木館(1966年新築、92年改築)と西館(74年新築、91年改築)で構成し、総客室は76室、宿泊人数は約400人。男女別の大浴場のほか、七尾湾を眺望できる露天風呂、ケイ藻石浴などが備えられていた。

 ピークの85年頃には年間売上高は10億円台に上っていたが、バブル崩壊以降の長引く景気低迷の影響で、売り上げはじり貧状態となっていた。

 収益の悪化から過去の設備投資が重荷となり、実質的な赤字状態が続き、資金繰りも逼迫(ひっぱく)していた。また、水道料金を4年以上にわたって滞納したことから地元自治体が提訴するなど、対外的な信用も失墜していた。(東京商工リサーチ)

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【会社概要】益田国際観光ホテル島田家 (4月上旬現在)

 ▽本社=島根県益田市

 ▽設立=1984年11月

 ▽資本金=1000万円

 ▽事業内容=旅館経営

 ▽負債総額=約3億2400万円

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【会社概要】能登観光ホテルなおき(5月上旬現在)

 ▽本社=石川県七尾市

 ▽設立=1961年10月

 ▽資本金=1000万円

 ▽事業内容=温泉旅館経営

 ▽負債総額=約20億円

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 〈チェックポイント〉

 益田国際観光ホテル島田家は、天皇陛下も宿泊された知名度の高さで人気を集めていたが、過去の「遺産」の上にあぐらをかき、設備の老朽化への対応が遅れて客離れを招いてしまった。関係先への支援要請も後手に回り、行き詰まった。計画的な経営が進められていたのだろうか。

 能登観光ホテルなおきは、能登の温泉地として有名な和倉温泉に立地し、過去には人気を博したが、バブル崩壊とともに業績が悪化。過去の設備投資が負担となった。公共料金の滞納などで信用は地に落ち、再建の道が断たれた。設備投資の妥当性は検証できていたのか。(東京商工リサーチ取締役情報本部長 友田信男)

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