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「原発ゼロ」の暑い夏…「脆弱な送電網」「老朽火発頼み」がエネルギーの現実
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【原発再考(上)】6月4日朝、駿河湾を一望する山腹に大型トラックが次々と到着し、待ち構えていた10人ほどの作業員が荷降ろしに取りかかった。
中部電力東清水変電所(静岡市清水区)。5日間で設備を点検し、故障が疑われる部品はすべて交換。予備の部品も積み上げておいた。今年2月に総点検をしたばかりで追加実施は特別措置だ。
普段は工場のような大口顧客のために各地から電力を集めて送り届けている特定規模電気事業者(新電力)などの利用が多いが、「今夏は責任が例年よりワンランク上がった」と青島清和所長は話す。
関西電力と九州電力がそれぞれ安定供給に最低限必要とされる供給余力(予備率)3%を維持するため、初めて東京電力から送ってもらう電力計58万キロワットの通り道の一つになるからだ。
全国に張り巡らされている送電網は、実は本州中央の「周波数の壁」で分断されている。東日本で流れる電力は周波数50ヘルツ、西日本では60ヘルツ。電力を往来させるには、同変電所などにある周波数変換装置を通す必要がある。
ただ周波数変換装置は、同変電所を含め「壁」近くに3カ所しかなく、通せる電力は計120万キロワット。「装置の新設よりも発電所を造った方が安上がりで効率的」(電力会社)とされ、震災後は20万キロワット分の能力拡張があっただけだ。
装置の故障などで東電からの送電が止まれば最悪の場合、関電の予備率は1・8%にまで低下。地区ごとに輪番で送電をやめる「計画停電」も視野に入る。
計画停電は、工場などでの生産活動の停滞だけでなく、病院、交通信号といった生命や安全にかかわる分野にも影響を及ぼす。東電が東日本大震災直後に実施した際、関東圏は混乱し交通死亡事故も発生した。
震災以降、全国の原子力発電所が順次、定期検査のため停止。政治判断により昨夏、国内で唯一稼働していた関電大飯原発(福井県)の3、4号機(出力各118万キロワット)も昨年9月に定期検査に入った。
全国で電力供給の足かせとなっている「原発ゼロ」だが、実は関西圏が最も重い。震災前、関電の発電量に占める原発の比率は40%強と、全国10社平均より10ポイントほど高かったからだ。
3月28日に電源開発(Jパワー)が長崎県に持つ火力発電所が事故で停止すると、この発電所から電力を仕入れていた中国電力は関電への送電を減らすことにし、関電は東電に頼らざるを得なくなった。
近畿経済産業局は6月19日、和歌山県海南市にある関電海南火力発電所に立ち入り調査を行い、保守管理態勢などを確認した。
同発電所の全4基は運転開始から40年超。「法定の基準ではないが、事故の危険性を考慮して廃止が検討される」(経済産業省電力基盤整備課)年数だ。しかし、同発電所を含め関電は40年超の火力を6基(合計出力330万キロワット)運転しており、今夏の供給力の1割強を占める。
また関電は今夏に火力をフル稼働させるため、全35基のうち過去最多の10基(同596・3万キロワット)で定期点検の先送りを決めた。設備に疲労が蓄積する恐れもあり、同経産局の小林利典局長は「予期せぬ停止が重なれば供給の余裕が吹き飛ぶ」と指摘した。
ことしは日本列島に冷夏をもたらすエルニーニョ現象が発生する見通しだが、西日本はむしろ暑くなるという。関電によると、夏は管内で最高気温が1度上昇するごとに電力需要が70万~90万キロワット増え、景気回復も需要を押し上げる。予備率3%(87万キロワット)は余力としては極めて小さい。
震災以降、関西圏では夏、冬と電力不足の懸念が持ち上がったものの、乗り切ってきた。「今年も何とかなる」という楽観論も聞かれる。だが電力供給を脅かす要素は、これまでになく広範囲に潜み、危機はいつどんな形で訪れるか分からない状況だ。
7月1日、節電要請期間がスタート。今回は、関西に東日本大震災後初めての「原発ゼロの夏」となる。電力の確保と原発再稼働をめぐる動きを追った。