ニュースカテゴリ:企業
メーカー
原電、敦賀死守へ「背水の陣」 原発再稼働めぐり規制委に徹底抗戦
更新
日本原子力発電(原電)敦賀原発(福井県)真下の断層が活断層か否かをめぐる原子力規制委員会の会合について、原電が「恣意(しい)的で、反論の機会すら奪われた」と大反発している。民間企業が許認可権を持つ規制当局にここまでかみつくのは異例だ。同原発再稼働の可否が原発専業の原電の経営を左右するという事情もあり、原電は背水の陣で全面戦争に臨んでいる。
6月24日、原電が自社のホームページに掲載した「原子力規制委員会への要請書の提出について」と題したプレスリリース。一読した大手電力幹部は目を疑ったという。
そこには、同21日の評価会合について、規制委を真っ向から批判する言葉ばかりが並んでいたのだ。
「議論を一方的に打ち切ったり、恣意的に誘導したりした」「当社の反論、説明の機会を奪った」…。
実は、原電側は同日の会合で新たな分析結果などをまとめた資料を準備していたが、採用されなかった。また、「規制委側の有識者の評価とは百八十度逆の意見」(原電)を持つ有識者2人を議論に参加させることも求めたが、これも拒否された。
会合で、原子力規制庁の部長が「前回会合で、資料は会合1週間前に手配いただくようお願いしていた」と、原電がその期限を守らなかったためと説明。2人の有識者についても「事業者が発表したいことをPRする場ではない」と断じた。
原電がこれに反論しようとすると、規制委の島崎邦彦委員長代理は「他の場でやっていただきたい。ここは技術的な検討をする場」と封じたのだ。
原電は要請書で、「1週間前との指示はなかった」と指摘。さらに、要請書の別紙として、会合3日前の規制庁担当者と原電担当者の電話による打ち合わせメモまで公開。もちろん、個人名は黒く塗りつぶされ、規制庁(N)、原電(J)とイニシャルにされていたが、Nから「(会合前日の)金曜日の午後5時に資料を間に合わせる努力をしていただきたい」と求められた生々しいやりとりも暴露し、自社の正当性を訴えた。個人名が書かれた社内文書まで公開するのは異例のことだ。
規制委は原発再稼働の可否を左右する鍵を握る。このため通常、電力会社がここまで敵対することはない。関西電力は大飯原発(福井県)の基準地震動(最大規模の地震の揺れ)をめぐって対立したが、最終的には規制委の言い分を丸のみした。
原電が「徹底抗戦」する背景には、規制委の対応への反発だけでなく、差し迫った経営事情もある。
原電は茨城県の東海第2原発と敦賀1、2号機の計3基を保有する。敦賀の再稼働が難しい中、5月には東海第2の安全審査も申請したが、東海第2は運転開始から35年を超える古い原発で、審査合格のハードルはかなり高いとみられる。
1基も再稼働できなければ原電は収益を上げられず、存続がおぼつかなくなる。
ある幹部は悲壮感を漂わせながら、こう言い切った。
「たとえ職を失ったとしても規制委の不合理さが白日のもとにさらされれば、悔いはない」
業界関係者の間では「規制委は自らの存在意義を示すため、敦賀をスケープゴートにしようとしている」との噂もささやかれる。規制委は敦賀原発真下の断層を活断層と断じるのであれば、原電の主張を科学的・技術的に否定できる根拠を示さなければならない。(藤原章裕)