ニュースカテゴリ:企業
金融
【企業スポーツと経営】三井住友海上火災保険(中)女子柔道部
更新
女子柔道部の柳澤久監督=2014年7月、東京都世田谷区の三井住友海上「世田谷道場」 ■「選手は社員」勉強は当たり前
三井住友海上火災保険の女子柔道部も女子陸上部と同様に「選手たちは、まず社員」という考え方が徹底している。柔道部の選手は現在10人だが、いずれも総務部、営業推進部、損害サポート業務部などに所属し、週4日の午前中は通常の業務にあたる。午後から、東京都世田谷区北烏山にある「世田谷道場」で練習やトレーニングに励む。
◇
◆専門教師呼び英会話
勤務がない日は練習に専念することができるが、それだけというわけではない。保険会社の社員として保険の基礎的な講義を受けるほか、競技に役立つ運動生理学などの勉強もする。毎週水曜日には専門教師を呼んで英会話も学ぶ。さらに一般教養や漢字のテストもある。
女子柔道部を率いるのは電気通信大学名誉教授でもある柳澤久監督。1989年の創部以来、監督を務める。「社員はまず企業人であり、社会人だから勉強は当たり前のこと。英会話は、国際試合においていろいろと役に立つから」というのが柳澤監督の基本的な考えだ。
柳澤監督は、まだ公開競技だった1988年のソウル五輪で全日本女子柔道の監督、96年のアトランタ五輪では副団長を務めるなど、日本女子柔道界の指導者的存在だ。だが、草創期のころはなんとか表舞台にと奔走し、多くの企業に支援を依頼したが、名乗りを上げてくれるところはどこもなかったという。
ちょうどこのころ、住友海上の当時の社長が「スポーツ活動を始めよう。これからマスコミも注目するような新しい競技がいい。女性の時代だから、女性のスポーツを推薦してほしい」という方針が打ち出され、いくつもあった候補の中から女子柔道に白羽の矢をたて、柳澤監督を招請した。
新時代にグローバルな展開を目指す会社の期待を背負った女子柔道部だったが、すぐに結果が出たわけではない。95年の世界選手権。日本開催で期待の恵本裕子選手があえなく1回戦で敗退。それも開始わずか11秒での一本負けだった。雪辱は翌年の96年アトランタ五輪だった。強豪ばかりで組み合わせが厳しく、副団長だった柳澤監督も「ダメかもしれない」と思ったほどだが、本人は「この枠で勝ち上がれば優勝ですよ」とあっけらかんとしていた。
◆情報収集と分析が重要
1回戦の相手はロシアの選手。恵本裕子選手は冷静だった。事前にビデオで研究し「これは攻め続ければ勝てる」と作戦を決めた。その通りに攻めに攻めて1回戦を優勢勝ち。とんとん拍子に優勝候補を破って、宣言通り金メダルを獲得した。
2008年の北京五輪で2連覇を飾った上野雅恵選手も、事前のビデオ研究や試合会場での相手選手の観察などを怠りなく行って勝利につなげた。柳澤監督によると、上野選手は出場する23選手全員の特徴などをすべて分析した一覧表を作成し、「私が一番強いと思います」と宣言した。決勝戦は相手の分析から「足技で倒して抑え込む」作戦を立て、その通りに相手を下した。
柳澤監督は「今は世界のどの選手もビデオなどで研究しているから、その上をいく新しい技も身につけなければならない。情報収集と分析は、自分で情報を集め、リポートを作成し考えることが重要」と言う。
もう一つある。「外国人選手は力が強いから、力負けをしてはダメだ。といって筋肉トレーニングをやればいいというものではない。柔道のための筋肉があるので、それに沿った強化をしなければ意味がない」。世田谷道場には独自開発して特許を取ったトレーニング器具が備えられている。
女子柔道部は、社会貢献の役割も担う。世田谷道場では週3日、地域の子供たちのための柔道教室を開く。夏休みには高校生を対象に指導も行う。国際的な交流も盛んだ。世田谷道場は海外のナショナルチームの合宿所に開放している。これまでにドイツ、英国、カナダ、ブラジル、ミャンマーなどから選手たちがやってきた。こうした交流を通じて女子柔道の国際的な普及に貢献する。ここにもグローバル展開する企業の姿勢が示されている。