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【原発ゼロの夏】電力の安定供給を考える(下-1)

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【原発ゼロの夏】電力の安定供給を考える(下-1)

更新

 ≪原子力はエネルギー安全保障の要≫

 □社会保障経済研究所理事長・石川和男氏

 □クレディ・スイス証券チーフ・マーケット・ストラテジスト 市川眞一氏

 □司会 産経新聞論説委員・井伊重之

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 ■原子力の維持は国家の安全保障上も重要

 井伊 日本にとって不可欠なエネルギー安全保障は、どのようにして構築していくべきなのでしょうか。

 石川 震災前は安全保障も含めてエネルギー全般にわたり電力会社が担うことが多く、行政は規制だけでよかった。しかし、国が前面に出て、エネルギー安全保障を考えていかなければなりません。今、世界中が福島第一原子力発電所の状況を注視している中で、政府は原子力を維持していくというメッセージを発することが重要になっています。それは民間企業が石油、天然ガスの価格交渉をする際に有効なカードなのです。電力会社や商社から足下を見られず海外と交渉しやすい環境をつくれるか、原子力発電をきちんとやっていくという政府の意思表示にかかっています。

 井伊 原子力の必要性や重要性は分かっているが、世論を気にしてなかなかそれを語れない。これが政治の世界ではないのですか。

 石川 確かにそのような雰囲気があります。政権交代が比較的起こりやすいといわれる小選挙区制の弊害ともいえるのではないでしょうか。

 市川 1982年に中国のトウ小平が、「第一列島線と第二列島線を確保せよ」という指示を出しています。第一列島線は東シナ海と南シナ海をカバーするラインで、第二列島線はハワイまでです。この制海権を握れるよう人民解放軍の近代化を進めよというものです。2011年の米議会では、中国が空母の運用を始め、複数船の建造も始めた中で東シナ海、南シナ海の制海権の確保を狙っているのではないかと問題視されていました。日本も、エネルギーを含めた国家の安全保障を政府がしっかり考えていかなければなりません。

 現在、日本はオイルショックの教訓から、原油は国家備蓄法により半年分の備蓄をしていますが、液化天然ガス(LNG)と石炭は備蓄に関する規制がありません。というのも、LNGはマイナス162度の環境で管理するためコストが膨大になりますし、石炭は大量に山積みしておくと粉塵が舞ったり、発火する危険があるので備蓄できません。そのため、電力会社が最も苦労しているのは燃料を運ぶための傭船です。長期間、備蓄ができない石炭やLNGは、適宜、船で補充する必要があります。1週間も船が入ってこないと発電用の燃料がなくなってしまう。

 これはつまり、悪意をもった誰かが、公海上で船を10日も止めてしまえば、日本のエネルギーは途絶し、社会が立ち行かなくなる恐れがあるということ。経済のみならず、国家安全保障上、極めて大きな問題です。

 井伊 日本が火力発電に過度に依存することによるリスクを考えると、原子力を維持することが国家安全保障上も重要だということですね。

 市川 おっしゃるとおりです。そのように考えると、エネルギー調達先の多様化も必要です。オバマ大統領が4月に来日した際にも首脳会談ではシェールガスの輸入が議題になりましたし、秋にプーチン大統領が来日すれば、サハリンからの天然ガスの輸入拡大が固まってくる可能性がある。これは輸入ルートを多様化するという面に加え、外国とのエネルギー価格交渉を有利に進められるという点でも極めて重要です。

 何らかの理由でLNG船が日本に来られない状況になったとしても、日本が自力で何とかやっていけるということが抑止力になり得ます。それができていたからこそ、震災後もなんとかなっているのですですから、日本が原子力で3割程度の発電ができる状態を保たないといけないのです。

 ■原子力は海外との交渉を有利にするカード/論理的に疑問ある小泉発言

 井伊 原子力の存在が海外との燃料価格の交渉に与える影響はどうでしょうか。

 石川 日本は外国との価格交渉が苦手ですが、それはすぐに苦しい足元をみせてしまうことも一因です。しかし、ビジネスの世界で、相手は同情などしてくれませんから、結局、高い価格で妥協してしまう。日本向けのLNG価格は2011年以降、原子力発電所が相次ぎ停止したために急激に上昇しています。LNGの指標は3つあり、日本向けと米国向け、欧州向けです。米国ではシェールガスがあるので価格は低下しています。欧州向けは微増傾向ですが、日本だけは大きく上昇しています。これは明らかに、日本の原子力発電所が次々に停止している苦しい足元を見られているからです。

 国家安全保障とエネルギー安全保障は、密接なつながりがあります。その観点からみると、原子力は海外との交渉で重要なカードです。六ケ所村の原子燃料サイクルが稼働し始めると、国内でウラン資源をリサイクルできるわけですから、交渉相手から見れば、燃料を買ってもらえないかもしれないというプレッシャーがあります。まだ、本格的な運用が始まっていませんが、再処理技術があるということだけでも日本の交渉力を強くするのです。

 市川 昨年11月、小泉純一郎元首相が日本記者クラブで「原子力はトイレのないマンションだ。原子力はすぐに停止すべきだ」と発言しました。その主張は最終処分場は政治的に判断できないのだから、これからもできないだろうということでした。しかし、5年5カ月に及ぶ小泉政権の下でも原子力はきちんと稼働していて、その間も使用済燃料は出続けていたのです。首相経験者の発言としては、無責任だと思います。

 原子力があってもなくても、現在ある使用済燃料をどうするのかの議論はしなければなりません。再処理すると使用済燃料1トン当たりMOX燃料が100キログラム、リサイクルウランが130キログラムつくることができます。今、既にある使用済燃料1万7000トンを処理した場合、現在のLNG価格に換算すると約17兆円に相当します。日本は莫大な宝の山を持っているといえます。再処理し、最終処分する量を減らし、使えるものは使い切る、こういう方向に向かってエネルギー政策を着実に推進していかないといけません。

 石川 最終処分場については、課題ではありますが、処分場がないと再処理ができないということではありません。なぜなら必要になる時期は早くても30年先からです。廃棄物は熱を帯びていますので、すぐには地下に入れられませんから冷やすだけで30年から50年は必要です。とはいっても、場所を選定してから概況調査と詳細調査で10年は必要になりますので、のんびりはできません。また、使用済燃料は再処理しなければいけませんが、それまでの間保管しておく必要があります。コスト面では、原子力をベースロード電源として活用すれば、十分サスティナブルなレベルであり、5年、10年のズレでコスト面に大きな影響が出てくるものではありません。トイレなきマンション説、最終処分場がないから原子力を稼働させるな、は正にスローガンでしかなく、解決すべき具体的課題の一つであると断言します。

 市川 最終処分事業を推進していくためには、誰かがきちんと工程管理をする必要があります。

 石川 最終処分の問題は、原子力を持つ国に共通する課題です。日本人だけではなく、外国の学識者なども含め、国内外の英知を結集させるべきです。

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