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【スポーツi.】FIFAワールドカップの内幕
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サッカーワールドカップブラジル大会のドイツ対ポルトガルの試合前、観戦に訪れたFIFAのゼップ・ブラッター会長(前列中央)=6月16日(現地時間)、ブラジル・サルバドルのフォンチ・アリーナ □帝京大経済学部非常勤講師・今昌司
「ワールドカップは、砲火を交えない戦争である」。これは、元テレビ東京アナウンサー、金子勝彦氏が、FIFAワールドカップを称して使っていた言葉である。フォークランド紛争の遺恨が残る中で開催された1986年メキシコ大会では、当事国のアルゼンチンとイングランドが準々決勝で対戦。ディエゴ・マラドーナによる中盤からの5人抜きで見せたスーパーゴール、さらに「神の手」ゴールによって、イングランドはアルゼンチンに沈黙した。しかし、マラドーナのゴールを、アルゼンチンのみならず、イングランドのサポーターまでが称賛した。
世界中を熱狂させるFIFAワールドカップという世界最高峰の舞台、そしてサッカーという世界で愛されるスポーツの魅力が、戦争の遺恨さえも封じ込めたのである。ただ、世界中を熱狂させる世界最高峰の舞台であるがゆえに、大会を主催する国際サッカー連盟(FIFA)の内側には、えたいが知れぬ魑魅魍魎(ちみもうりょう)が渦巻いているとも言われている。
◆収入源と蓄財
FIFAの財務報告書によると、2013年にFIFAが得た収入は、1386億円である。テレビ放送権料が630億円、スポンサーシップ収入が413億円で、両者で収入の75%というのが内訳である。FIFAの最大の収入源は、4年に1度開催されるFIFAワールドカップであり、よって、FIFAの経営規模を図る場合は、4年ごとの財務規模を見るべきである。南アフリカ大会が開催された10年までの前回の4年間のFIFAの収入は計4189億円にも達した。
今回の4年間は、11年から13年までの3年間で計3622億円になっており、前回の収入を上回ることは間違いない。そして、この莫大(ばくだい)な収入は、世界中にサッカーというスポーツを普及し、その環境を向上させるために役立てられている一方で、世界のサッカー界のトップであるFIFA会長の座を揺るぎないものにするための力にもなっている。
FIFA第8代会長であるゼップ・ブラッター氏は、98年に、それまで24年間もの長き間、頂点に君臨し続けていたジョアン・アベランジェ氏の直系とも言われる後継者として事務総長から会長の座に登りつめた。スイス出身ではあるが、彼の支持母体は、アフリカや北中米・カリブ海、南米など欧州以外の加盟協会が中心である。それが、彼の政治力の源とも言える。ブラッター氏が会長就任当時のFIFAの蓄財は約40億円強。それが、13年には1432億円にまで増加している。02年日韓大会からは、テレビ放送権販売を入札方式に変え、98年フランス大会の10倍にまでその額を急騰させた。07年からは、スポンサーシップ方式を大幅に改革。トップパートナーの社数を限定し、契約金を一気に引き上げた。グローバル企業の多角経営に呼応した新しいシステムの導入である。
こうして得たマーケティング関連収入、そしてその収入の拡大による膨大な蓄財は、彼の支持母体の国々にも大きく貢献している。ブラッター氏が会長就任直後の99年に創設した「ゴール・プログラム」は、世界各国のサッカーの普及や環境整備のための資金供与であり、会長1期目の4年間だけでも117協会に約115億円を分配している。10年大会開催国決定時から採用した大陸巡回方式によって、10年は南アフリカでの開催となり、アフリカ大陸初の開催を実現した。
◆会長の政治力
そして、今年開催されたブラジル大会は、アベランジェ前会長への恩義ともささやかれる。事実、18年は、大陸巡回方式ならば北中米カリブ海の中での開催となるはずであったが、ブラッター氏は、ブラジル開催が決まるや否や、大陸巡回方式を撤回。18年大会以降は2大会一括での決定方式に変更し、18年はロシア、日本も一度は立候補した22年は、いまだに開催日程で右往左往しているカタールを開催地として決定したのである。
潤沢な資金を引き寄せたブラッター会長の政治力は、会長4期目を迎えようとしているいま、さらなる極みを見せようとしている。
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【プロフィル】今昌司
こん・まさし 専修大法卒。会社各社で営業やスポーツ事業を担当。伊藤忠商事、ナイキジャパンを経て、2002年からフリーランスで国際スポーツ大会の運営計画設計、運営実務のほか、スポーツマーケティング企画業に従事。13年から帝京大経済学部経営学科非常勤講師。ブログは(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/umekichihouse/)