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すき家、驚愕の労働環境 「2週間家に帰れない」「あっという間にワンオペに…」

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すき家、驚愕の労働環境 「2週間家に帰れない」「あっという間にワンオペに…」

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すき家の店舗に張られたアルバイト募集の張り紙。イメージ悪化もあって人手不足の解消は厳しい状況だ=5月、東京都内  ゼンショーホールディングス(HD)が展開する牛丼チェーン「すき家」での過酷な労働実態が明らかになった。積極的な新規出店を背景に外食業界で売り上げトップの企業に登りつめたゼンショーだが、その裏側で徹底されたコストダウンが背景にある。月500時間超勤務など驚愕の労働環境は人手不足を招き、多くの店舗が休業に追い込まれる事態に。深夜時間帯の1人勤務「ワンオペ」の見直しとともに牛丼の値上げに乗り出すが、成長を支えたビジネスモデルの転換につながるだけに経営の立て直しは容易ではない。

 悲痛な叫び届かず…

 「2週間家に帰れない」「体重が20キロ以上やせた」-。

 7月末に公表された、すき家の労働環境を調査した第三者委員会の報告書には従業員らの悲鳴が並び、バイトを含めて恒常的に月500時間以上働いている人もいた過酷な実態が浮き彫りとなった。

 全国に約2千店舗あるすき家の大半では、1人の店員が接客から調理、会計など、すべての仕事をこなす「ワンオペ」という深夜勤務体制が取られていた。人件費を大幅に抑えることで利益率を高めるためだ。

 ただでさえ、店員の負担が大きいうえ、今年2月に調理の手間がかかる鍋メニューを発売すると、不満を募らせたアルバイトらが続々と退職。人手不足で営業を休止・短縮した店が100店舗を超えた。このためゼンショーHDは4月に久保利英明弁護士を委員長とする第三者委を設け、調査に乗り出していた。

 この調査で明らかになったのは、人手不足に悩む現場の声に耳を傾けることなく、新規出店を通じて利益追求に走る経営陣の姿だった。

 第三者委の報告書は「現場に『無理』をさせない限り、運営できないことは明らかだった」と、違法状態にあったと認定。さらに、「現場に対するケアは二の次となっており、危機意識をもつ経営幹部が不在だった」と、過重労働を是正できなかったのは組織的な問題だったとも指摘した。

 そもそも、すき家では数年前から、ワンオペとなる深夜時間帯を狙った強盗事件が頻発し、経営側もワンオペの見直しなどの対応に乗り出す方針を打ち出していた。にもかかわらず第三者委の報告書によると、実際は「警察から言われて、ワンオペが解消されたと思っても、あっという間にワンオペに戻していた」という。

 利益優先のツケ

 そんな収益優先体質の背景には、昭和57年の創業からわずか30年で外食最大手にのし上がったゼンショーの企業文化がある。久保利委員長は「短期間で急成長を遂げた成功体験から、創業メンバーら経営幹部の間には長時間労働を容認する考え方が根強く、法令を軽視していた」と指摘した。

 そのツケは業績の悪化という形となって現れた。

 ゼンショーHDは8月、平成27年3月期の連結最終損益が従来予想の41億円の黒字から、13億円の赤字に転落する見通しになったと発表した。赤字は創業以来初めて。9月末までにワンオペを解消する方針で、人手不足によるすき家の一時休業による売り上げの落ち込みに加え、ワンオペの見直しによる人件費増加などが響くのが赤字の理由だ。

 調査時点でワンオペを続けていたすき家の店舗は半数近い約940店舗。近隣店舗からの応援やアルバイトの勤務店舗を変更、外国人留学生の採用拡充によりワンオペ解消に努める考えだが、「それでも(約940店の半分の)460~470店は深夜営業を休止することになる」(ゼンショーHDの小川賢太郎会長兼社長)。約940店舗すべてで深夜営業を休止する可能性もあるといい、業績への影響は避けられない。

 しかも、すき家は原材料価格の上昇を理由に、8月27日から牛丼並盛りの税別価格を250円から270円に値上げする。「労働条件の改善やサービス向上のために利益を確保しないとバランスがとれない」(小川氏)ためだ。24時間営業に加え、牛丼チェーンでは後発だったすき家の急拡大を支えてきた低価格路線も曲がり角を迎える。

 景気回復などを受け、外食業界での人手不足は深刻化しており、時給を引き上げてもなかなか人が集められない状況にある。イメージ悪化もあって人手不足の解消は厳しいとみられ、確保できたとしても人件費の高騰が重しとなるのは必至だ。新たなビジネスモデルを描くどころか、経営立て直しすらままならないのが実情だ。

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