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【原子力 再興】(2)教訓と技術 求める世界 調査・除染に欠かせぬロボット

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【原子力 再興】(2)教訓と技術 求める世界 調査・除染に欠かせぬロボット

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 7月中旬、東京電力福島第1原子力発電所2号機に2台のロボットが投入された。日立製作所が開発した床面走行ロボット「トライダイバー」と、水中遊泳ロボット「げんごROV(ロブ)」だ。原子炉格納容器の下部を覆う室内は、半分ほどが汚染水に漬かっている。2台は連携して汚染水の流れを検知し、漏水箇所を探査する狙いだ。

 げんごROVが細かい粒を水中に散布し、水底を移動するトライダイバーが超音波センサーを使って粒の流れを測定する。散布した粒子が流れ込む場所が、漏水箇所だ。配管部分5箇所を調査した結果、カメラやセンサーで漏水は確認されなかったが、ロボット調査の有用性は実証された。

 トライダイバーを開発した日立GEニュークリア・エナジー(日立GE)の木下博文チーフプロジェクトマネージャは「ロボットが障害物に動きを阻まれることもある。トライ&エラー(試行錯誤)の繰り返しだ」と話す。

 建屋内は放射線量が高く、人間が入って作業するのが難しい場所が多い。廃炉作業には調査や除染を行うロボットは欠かせない。日立GEや東芝、三菱重工業などプラントメーカー各社は東京電力などとともに国際廃炉研究開発機構(IRID)に加わり、“オールジャパン”で技術開発を進めている。

 ◆粒子でデブリ把握

 汚染水対策に追われる福島第1原発の廃炉作業だが、最も困難な作業は原子炉内で溶け落ちた燃料(デブリ)の取り出しだ。政府は2020年にデブリ取り出しを開始する目標を設定した。だが、現時点ではデブリが格納容器内にあるのか、建屋内に流出しているのかすら確認できない。

 東芝は米ロスアラモス国立研究所(ニューメキシコ州)や東電と協力し、宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線「ミュー粒子」を使って、デブリの位置や状態を把握する新たな装置の開発を進めている。

 建物や山をも通り抜けるミュー粒子だが、核燃料に含まれるウランなど密度の高い物質を通り抜けると、進路が変わったり粒子の数が減少したりする。この原理を使い、同研究所は貨物コンテナ中の核物質を検知する装置を開発していた。だが、分厚いコンクリートや鋼鉄越しに原子炉内を透視するのは前例がない。

 東芝原子力福島復旧・サイクル技術部の四柳端(よつやなぎ・ただす)部長は「原理は分かっていてもこれまで世になかった技術だ」と説明する。東芝は自社で所有する研究用原子炉で実証実験を行っており、来年度に福島第1原発に投入する予定だ。

 ◆大産業への可能性

 福島第1原発で培った除染やデブリの取り出し、機器の遠隔操作などの技術は、世界の注目も高い。

 米エネルギー省のウィリアム・マーチン元副長官は「新たに原発を導入しようとする国々は、福島の教訓と、日米の技術を必死になって求めている」と指摘した。

 政府は6月にまとめた新成長戦略でも、原発を含めたインフラ輸出について、「迅速かつ着実に実施」と掲げた。新興国などでは原発の建設から運営、廃炉までをパッケージで求められるケースも予想される。

 こうした中で、日本企業も動き始めた。

 IHIは昨年、原発などの除染・解体技術を持つ米ナイトロシジョンを買収、廃炉事業に本格参入した。

 また、日立は9月30日に、英国などに原子力研究開発拠点「欧州原子力研究センタ(ENRC)」を設立。欧州の廃炉技術やプラントの予防保全技術を取り入れ、安全で高効率な技術の開発を進める計画だ。

 日本エネルギー経済研究所の豊田正和理事長は、福島第1原発での廃炉に伴う技術開発の意義をこう強調した。

 「世界で廃炉が大きな産業になる可能性を持っている。日本が建設技術だけでなく、廃炉技術でも世界トップクラスになれるか。今がその転換期だ」

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