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【タービンの“福音” 発電・環境技術の最先端】(8-1)

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【タービンの“福音” 発電・環境技術の最先端】(8-1)

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三菱日立パワーシステムズ製のガスタービン。世界に誇る日本の発電技術は、こうしたタービンをはじめとする先端的な技術、ノウハウによって切り開かれてきた  ■電力安定供給 重要課題解決のヒント

 東日本大震災の発生から3年半。被災地では依然として復興に向けた取り組みが続く一方で、日本全体という点では震災前の活力を取り戻した感もある。しかし、経済構造は微妙に変化した。震災に伴って起きた福島第1原子力発電所の事故は、原子力発電所の安全基準に問題を投げかけた。折しも日本は、原子力発電所が一つも稼働しない中で夏の電力需要のピークを乗り切ったが、半面で化石燃料を大量に消費する状態が続き、今年上期(1~6月)の経常収支は5075億円と半期ベースでは過去最大の赤字を記録した。日本のエネルギー、とりわけ電力供給の問題は、喉元を過ぎるどころか長期的かつ国家的な重要課題に変化したといっても過言ではない。われわれはこの難局にどう対処すべきなのか。発電技術の最先端に解決のヒントを探した。(青山博美)

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 日本のエネルギーをどうしていくべきか。特に、経済活動や社会生活に欠かせない電力をどう確保していくのかは、今後の国家的課題である。

 震災後、全国で盛んに整備されてきた太陽光発電設備なども、将来の電力供給に資する動きといえる。太陽光発電は、猛暑にあえぎ、エアコンがフル稼働する真夏の昼間に発電量が最大化する。電力供給のピークを乗り切る上で優れた特徴を備えているといえる。

 ◆原子力が3割負担

 ただ、太陽光に代表される自然エネルギーには弱点がある。稼働上のムラが激しいという点だ。現時点では大容量の蓄電が難しいこともあり、夜間や天候不良が長引いた場合でも電力を安定供給する仕組みが必要となる。そうした電力の安定供給は、1970年代までは石油が、最近では石油に代わって原子力やLNG(液化天然ガス)が担ってきた。

 目下の電力にまつわる最大のテーマは、この安定供給をどうするのか、だろう。裏を返せば原子力をどうするか、でもある。

 原子力発電は、震災前の2010年度には発電電力量ベースで全体に占める構成比が28.6%と、実に日本の電力の3割を担ってきた。これが震災を機にほぼゼロになった。不足分は火力で補われた。中でも、石油火力の稼働が急増した。

 オイルショックの反省から進められた“脱石油”“脱中東”の動きは、2003年に初めて策定された「エネルギー基本計画」にも引き継がれ、石油火力は一貫して稼働率を下げてきた。オイルショック後は、特殊なものや特定の地域を除いて新設されなかっただけに、現在稼働している石油火力発電所の大半は旧式だ。にもかかわらず、石油火力への依存が避けられない。日本にはもはや発電設備に余裕がないのだ。

 それでも、なんとか電力の安定供給は続けられている。このため、次第に市民の危機意識は薄れ、長期的な重要課題という新たな側面が取り沙汰されることも減ってきた。

 確かに、安定供給されればいいという考え方もある。が、石油は世界的な需要増や産出地域の紛争、折からの円安などを背景に調達コストがあまりにも高い。しかも、発電設備は古く、効率上も改善の余地が大きい。今後も石油火力を盛大に使用し続けるのは得策ではない。では、他に頼りになりそうなものはあるのか。

 ◆日立製作所と事業統合

 日本の発電技術は、世界トップレベルにある。この技術力は、13年度の電力量構成比で43%以上にもなっているLNG、同30%を超えた石炭火力などに生かされている。例えばLNG。まずはガスタービンで気化した天然ガスを燃焼させ、ここで得た動力で発電機を回して発電する。さらに、ガスタービンから発生する熱で排熱回収ボイラーを用いて蒸気を発生させ、発電機につながった蒸気タービンで再度発電する。この“コンバインドサイクル”と呼ばれる複合発電に最先端のタービン技術などが投入された結果、最新の設備は稼働中のものでも発電効率が60%に達している。三菱重工業と日立製作所の火力発電事業を統合して2月に発足した三菱日立パワーシステムズは、1650度という高い燃焼温度を実現するガスタービンの開発を進めており、実用化時の発電効率は63%にも達するとみられる。

 一方、ガスなどと違ってコンバインドサイクルが困難な石炭でも、蒸気タービンを駆動させる蒸気を高圧高温化することで発電効率を42%以上にまで高めたプラントが稼働し始めている。公害防止や高効率運転の進展は、安価な燃料である石炭の可能性を広げるものとして注目される。

 昨年11月には、福島県いわき市にある常磐共同火力の勿来(なこそ)発電所の石炭ガス化複合発電(IGCC)が、IGCC設備の連続運転で世界最長記録を更新した。IGCCは、石炭をガス化して燃料に利用する。発電設備は、固形物である石炭では難しかったコンバインドサイクルを活用。石炭を使った超高効率発電を実現する“夢の技術”と目されている。

 これらの最先端技術は、エネルギーの世界に新たなベストミックスの“選択肢”を提供する。あわせて、日本の製造業が注力すべきプラント輸出の有力分野としての期待も大きい。石炭やLNG活用の最前線をみてみよう。

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 ■メモ

 発電効率の表示には、発電機の端子部分で計測した電力量を用いて計算する「発電端」効率と、この「発電端」から発電所内で使用される発電に必要な補機動力を差し引いた電力量を用いた「送電端」がある。また、燃料中の水分や燃料によって生成された水分の凝縮熱も含めて効率を計算する高位発熱量基準(HHV)と、それらの熱を含めずに計算する低位発熱量基準(LHV)がある。通常日本では、発電プラントの効率が「送電端、LHV」で表示されることが多い。本特集でも、特に注記がない限り「送電端、LHV」で表示している。

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【用語解説】エネルギー基本計画

 エネルギー政策の基本的な方向性を示すためにエネルギー政策基本法に基づき政府が策定するもの。2003年に初めて策定され、14年4月には第四次計画が閣議決定された。最新の計画では、経済効率性(Economy)、エネルギー安全保障(Energy Security)、環境適合性(Environmental Conservation)の“3E”を高次元でバランスできるよう、化石燃料と原子力、再生可能エネルギーによるエネルギー源の多様化を進めるとともに、11年3月の東日本大震災を踏まえた安全性(Safety)の確保にも最大限配慮する「3E+S」の実現を目指すとしている。

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