SankeiBiz for mobile

【ビジネスのつぼ】ショウワノート「ジャポニカ学習帳」

ニュースカテゴリ:企業のメーカー

【ビジネスのつぼ】ショウワノート「ジャポニカ学習帳」

更新

ショウワノートの片岸茂社長は「今後も国産にこだわりたい」と話す  ■「継続は力」でトップブランド維持

 ショウワノートの「ジャポニカ学習帳」は、累計で12億冊を販売してきた学習帳の代名詞的存在だ。その成功は、植物の表紙写真に象徴される基本デザインを守りつつ、時代の変化と折り合いをつけてきたことにある。とはいえ、トップブランド維持の苦労は並大抵のものではなく、まさに「継続は力なり」のたまものだった。

 ◆立体商標に登録

 「長年にわたり積み重ねた信頼の証しだ」

 今年初め、ショウワノートの片岸茂社長は、ジャポニカ学習帳が立体商標に登録されるとの知らせに顔をほころばせた。

 誰もが知る商品だけに、近年は類似商品が出回ったり、大人向けの風俗パロディーに仕立てられたりする例が相次ぎ、商品イメージが損われつつあった。立体商標に登録されれば、こうした動きを食い止め、トップブランドの地位が強固なものとなる。

 ジャポニカ学習帳の発売は1970年。他社の30円に対し、50円と高かったが、「高級感のある学習帳」という新ジャンルを開拓するのに成功。現在の学習帳におけるシェアは4割といわれ、子供時代に慣れ親しんだ大人が買い求める現象まで起きている。

 強みの一つに、「子供たちが見られないものを写真で紹介する」(片岸社長)というコンセプトを守ってきた点がある。

 表紙写真は4、5年に1度刷新し、同じ品種は2度と採用しない。このため多額の費用をかけており、専属カメラマンの山口進氏は、重い機材と寝袋持参で海外に何カ月も滞在する。その過酷さは、同氏が「アシスタントが定着しない」とこぼすほどだ。

 小学館の協力で掲載し、知識を広めるのに役立つ「学習百科」や、表紙などに採用された目に優しい深緑色のイメージカラーを含め、基本形は今も変わらない。

 もっとも、過去には危機もあった。

 今でこそ盤石な地位を築いているが、発売直後は会社の知名度が低かったこともあって受け入れられず、あっという間に在庫の山を抱えてしまった。追い込まれた同社は、残った資金で思い切ってテレビCMを打つことにした。

 視聴率の高い時間帯は枠が埋まってしまっていたため、やむなく空いていた昼の番組を選んだ。タイトルは「女のうず潮」。三ツ矢歌子さん主演の昼メロだった。「子供が学校にいる時間なのに…」。現実を無視した決定に、社内でも異論が噴出した。

 破れかぶれともいえるこの賭けは吉と出る。文具店は家族経営が多く、この時間にテレビを見ながら休息をとっていたからだ。予想外のCM効果で、同社は取り扱いを一気に増やすのに成功した。

 危機は2年前にも訪れた。表紙写真から昆虫が消えたのだ。教師や母親から「気持ち悪い」とクレームが寄せられたのを受けた措置だった。

 「若い先生がチョウを見て、『ガじゃないの?』と。昆虫採集の機会が減ったせいかな…」。片岸社長は寂しそうに話す。

 ◆ニーズ取り込む

 一方で同社は、自ら時代のニーズを取り込む努力も怠っていない。今年11月には、小学校高学年向けに新シリーズ「ジャポニカフレンド」を投入した。表紙に子供の顔のイラストを入れた、「本家」とは趣の異なるデザインで、女の子も受け入れられるよう、かわいらしさを打ち出した。計算用などに使う2冊目の需要がターゲットだ。

 かつては、鳥を表紙写真に採用した「バード学習帳」を発売寸前で取りやめたことがある。中学生向けの姉妹商品を実際に発売し、不発に終わったこともある。それでも投入するのは「伝統を守るだけでなく、時代に合わせて需要を喚起しないと生き残れない」(片岸社長)との思いがあるからだ。

 ジャポニカ学習帳は、今も富山県高岡市の本社工場で作っている。少子化で、市場環境は厳しい。足元の円安で原材料費の高騰にもさらされ、大手小売店が安価なプライベートブランド(PB)商品を売り出す動きもあるが、片岸社長は「今後も国産を維持したい」と誓う。(井田通人)

ランキング