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【ケータイWatch】ポール・エレメンコ氏に聞く(下)
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サンプルでは、透明なケースに入ったモジュールを組み立てる □「Project Ara」責任者 ポール・エレメンコ氏
■付け替えスマホ、ハードの民主化推進
気分にあわせて、あるいは必要に応じて、機能を選び、モジュールを付け替えるスマートフォン「Project Ara(プロジェクト アラ)」。計画を進める米グーグルのポール・エレメンコ氏のインタビューの続き。(前回は3日付掲載)
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■来年後半に市場調査 新機軸で課題克服
◆まずは消費電力抑制
最初の課題の一つは、モジュールデバイスを支えるため、できる限り消費電力を抑制する、電力のオーバーヘッドを下げるということでした。一般的なスマホと同じような待ち受け時間、利用時間を確保しなければいけないと考えています。プロジェクト アラでは、東芝がICチップのパートナーです。デバイス上のネットワーク(モジュール間のやり取り)で消費する電力をできるだけ抑えて、スマートな電力管理を実現したい。我々は“モジュラリティのオーバーヘッド”と呼んでいるのですが、これを下げる努力をしてきたのです。
バッテリーもモジュールの一つですから、さまざまなサードパーティーから登場するでしょう。複数の企業がバッテリーモジュールを供給するようになり、いろいろなテクノロジーを搭載するバッテリーが今後利用できるようになる、エネルギー密度が高いものが利用できるようになる、といったことも考えられるでしょう。
それからバッテリーのホットスワップ機能(電源ONのままパーツを交換する)もサポートしたいのです。これはエンドスケルトンに小型のバッテリーを内蔵することで実現したいと考えています。
最初はマーケットパイロット(市場調査)を2015年の早い時期としていましたが、これは15年の後半、おそらく遅い時期になりそうです。いくつかの課題に遭遇しましたが、一つは先述した消費電力です。
もう一つはデータインターコネクト(モジュール間通信)です。モジュールとエンドスケルトンの接続は、現在のMDKではピンでつなぐ形ですが、実はワイヤレスにして、コネクターなしで接続する形にしていきますが、これが難しかった。これは、モジュールとエンドスケルトンの間では、インダクティブカップリングという技術を、そしてMIPI(エムファイ)というプロトコルを採用しています。MIPIは、高速で、多様なパワーレベルに対応しています。なかでも2つ、大きな問題があります。1つのインダクターでとても低い周波数と、GHz級の帯域をサポートしなければならなかった。
もう一つが“エアギャップ”です。例えばポケットに入れたまま座ると、本体がゆがんで、エンドスケルトンとモジュールの間の隙間が変化して、インダクタンス(電磁誘導で発生する起電力の量)も変化してしまいます。
パートナーである東芝は、モジュールのチップとエンドスケルトンのスイッチの開発に携わっています。ラボにあるプロトタイプはきちんと動作しており、東芝からは課題をクリアしたチップを年末までに受け取る予定です。
◆2つの通信アンテナ
最初はWi-Fiに対応して、開発は簡単でした。12月完成予定のプロトタイプが3G、その次の1~3月に登場するSpiral 3はLTEに対応する予定です。
LTEはダイバーシティアンテナ、つまり2つのアンテナが必要なんですね。これをどう解決するか、現在2つの方法を検証しています。
一つは、アンテナモジュールを端末のトップとボトム(上部と底部)に装着して、そのアンテナモジュールをアナログの通信用バスで結ぶ、というやり方です。これはMIPIではなく、物理的なコネクターを介してつなぎます。ここには4つのピンがあり、電力供給用と通信用で各2つです。ピンではなくスプリングリーフになるかもしれません。あるいは4つのインダクティブパッド(ワイヤレス)かもしれません。ピンはエンドスケルトンのほうに備え、モジュールのほうにとがった部分はありません。もしポケットに入れていてもポケットに穴を開けたりしません(笑)。
もう一つは金属製のエンドスケルトンをアンテナ代わりにするというアイデアです。
認証プログラムがあるかどうか、という点は「YES」であり「NO」という答えになります。誰でもMDKで開発できるようにする一方で、グーグルのモジュールマーケットプレイスでの販売のためには、安全の要件を満たしているという意味での認証が必要です。
ですが、モジュールのスペック、品質に関するテストを実施することは考えていません。ユーザーからの評価、フィードバックでそうした面はわかるようになるでしょう。
ある意味、Google Playにおけるアプリに似た環境ですね。現在も、スマホに対してユーザーがレビューして評価を投稿することはできますが、これは“ハードウエアの民主化”の一つと言えるでしょう。
◆50ドルは部品表の金額
今春の開発者イベントでは、「グレイフォン(Gray Phone)」を紹介しました。そして50ドルという金額も出ましたが、この金額は販売価格ではなく、部品表(BOM、bill of material)の金額です。つまり、製造時の、エンジニアリング上の目標です。グレイフォンはローエンドで、ベーシックな端末です。CPU、ディスプレー、バッテリー、Wi-Fiという組み合わせでの目標額ですが、間違いなくアグレッシブな目標です。
製造する上で、エンドスケルトン自体が高額になってはいけないということで、この目標額を発表しました。端末価格自体は、モジュールに負うところが大きい。モジュールの価格は、グーグルがコントロールするものではなく、モジュールデベロッパーが決めることになります。ですから、例えば「Nexus6」と同等のスペックでいくらになるか、と問われても、それはデベロッパーがモジュールの価格をどうするかによって変わってきますので、私からは何も言えないのです。ただ、ハイスペックな性能でコストが上昇するという面と、複数のデベロッパーが参入することでの競争促進による価格下落という面、それらのバランスがどうなるか、ということもあるでしょう。
安価なスマホという面では、グーグルでは新興国向けに「Android one」という廉価な機種を用意しています。次の50億人へインターネットを利用できる環境を、という面でも光回線や気球を利用した回線などのプロジェクトを進めています。
プロジェクト アラの目標は、たとえば「Nexus6」を安くする、といったことではなく、新しいイノベーションを導入していくといったことになります。これまでの標準的な手法ではできなかったことを実現していく。たとえば環境モニターや医療用デバイスを作ったり、あるいは最先端のバッテリーテクノロジーでよりエネルギー密度を高めたものを可能にしていったりするということです。(インプレスウオッチ)