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【京都 元気印】嵯峨野観光鉄道 トロッコ列車、訪日客人気で年100万人超

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【京都 元気印】嵯峨野観光鉄道 トロッコ列車、訪日客人気で年100万人超

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紅葉の中を走る嵯峨野トロッコ列車=11月20日、京都市西京区のトロッコ保津峡駅(志儀駒貴撮影)  京都でも1、2を競う観光名所・嵐山と保津峡のある亀岡市を結ぶトロッコ列車。保津川渓谷沿いに春は満開の桜、秋は目にも鮮やかな紅葉と、四季折々の景観を楽しみながら7.3キロを約25分かけてノスタルジックなデザインの車両が走る。1時間に1本の運行ながら、年間100万人を超える観光客が訪れるのが嵯峨野観光鉄道だ。

 ◆開業まで困難の連続

 1991年にJR西日本の100%子会社として開業した。JR山陰線の電化、複線化にともない、廃線を利用して観光列車を走らせるが、開業までは困難の連続だったという。

 そもそも、京都の新しい観光資源として旧山陰線を活用できないか、京都府のそんな打診から始まった。ただ、トロッコ列車の運行が運輸省(現国土交通省)から認可され、正式に決定したのが90年11月。開業の91年4月に向け、ほとんど準備の時間はなかった。

 線路はすっかりさび付き、雑草は伸び放題。とても列車を走らせる状態ではなかった。線路や枕木を取り換え、草刈りに追われた。客車も木材などを運んでいた貨車をレトロ風のトロッコ列車に改造した。現在、満開の桜のトンネルを走ることができるのも、長谷川一彦前社長(現顧問)が中心になってそのころに桜の木を植えたからだ。

 「当初は年間利用者数は23万人程度と見込まれていた」と話すのは坂口勇一総務課長。当時、京都駅に勤務していて、長谷川前社長とともに沿線に桜の木を植えたりしたという。

 ところが、予想を上回り開業初年度の利用者は69万人を超えた。「その後は右肩上がり」(坂口さん)で、2013年度の年間利用者数は過去最高の105万人に達した。

 特に外国人観光客に人気が高い。森泰藏社長は「はっきりした数字ではないが、100万人のうち、約20万人が海外から。うち7万人は台湾からのお客さまで、それ以外が香港や韓国、シンガポール、マレーシア、欧米とみられる」と話す。

 今年度も100万人を超えるのは確実で、利用者数は大雨で2日間運休した8月を除き、各月で前年同月を上回っている。「円安の影響で、海外のみならず日本の観光客が9、10、11月に増えた。海外へ行くより『京都へ行こう』という人が増えていると思う」と森社長はいう。

 ◆アイデアふんだんに

 トロッコ列車の人気の裏側には、社員らの努力やアイデアも随所に盛り込まれている。

 沿線で紅葉の見どころや景観の良いポイントでは、徐行運転するほか、社員が扮(ふん)した伝説の鬼「酒呑童子」が車内で記念写真に応じるなど、乗客へのサービス精神を優先する。

 駅売店でコーヒーを注文すると、「嵯峨野」のロゴが入ったプラスチック製のカップにコーヒーを注いでくれ、「記念に持ち帰ってください」と、ポリ袋を一緒に渡してくれる。

 「社員旅行でスペインに行き、列車に乗ったときに受けたサービス。社員のアイデアで自社でも実施することになった」(坂口さん)

 シーズンオフの1、2月は運休し、車両の点検や、枕木の取り換えなどのメンテナンスのほか、次年度の開業に向けた営業活動に充てている。

 森社長は「観光鉄道とはいえ、お客さまの命を預かっているのは何ら変わらない。安全確保が最優先」としたうえで、「嵯峨・嵐山や亀岡など沿線の資源をお借りする形で商売しているのはありがたいこと。地域の人たちにどう恩を返していくのかが課題」と話している。(塩山敏之)

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【会社概要】嵯峨野観光鉄道

 ▽本社=京都市右京区嵯峨天竜寺車道町 ((電)075・861・8511)

 ▽設立=1990年11月

 ▽開業=1991年4月

 ▽資本金=2億円(JR西日本100%出資)

 ▽従業員=81人

 ▽売上高=11億円

 ▽事業内容=運輸、物販・飲食、レンタサイクル、駐車場

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 ≪インタビュー≫

 □森泰藏社長

 ■シーズンオフの魅力伝える努力必要

 --昨年度、年間利用者数が100万人を突破した。外国人観光客に人気があるようだが

 「台湾からのお客さまが圧倒的に多く、ここ2、3年一気に増えてきました。台湾との交流は10年の歴史があるんです。台湾からの旅行ではトロッコ列車に乗るのが定番。トロッコ列車が組み込まれないツアーは人気がないとおっしゃっていただける旅行社もあるくらいです」

 --沿線のガイド冊子を6万部作成した

 「何のためにつくったかというと、近隣の店の方々から『旅行客の方々にトロッコ列車の駅はどこにあるのかと、よく聞かれる』とのお話を何度かいただきました。嵐山は道がくねくねと曲がっていて、説明が難しい。それで活用してもらうためにつくりました。ユズで有名な水尾や亀岡の馬堀地区など沿線紹介もしています。楽しく紹介するため、地元の方々にも出ていただいています。嵯峨・嵐山の英語の詳細地図の作成も検討しています」

 --もうすぐ開業25周年を迎えるが、これからどのようなビジョンを描いているのか

 「一つは東京オリンピックがあり、海外観光客2000万人という話もでています。日本からも海外からも喜んでもらえる世界一のほんまもんの観光鉄道にしたいですね。数の問題でなく、質もあげてオールシーズンで、安定して楽しんでもらえるようにしたい。観光シーズンのピークに来てもらえる人数には限界があるので、ほかの季節もいいというものを伝える努力をしなければいけないと思います。そのためにはそれだけの魅力がないときてもらえません。リピーターで来てもらえるようにならないと、ほんまもんではないと思います。これからみんなで勉強させてもらい、一人一人のお客さまに本当に喜んでいただけるサービスができたかを考え、いいものにしないといけないですね」

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【プロフィル】森泰藏

 もり・たいぞう 京大法卒。1985年国鉄入社。87年JR西日本入社。本社財務マネージャーなどを経て2006年執行役員福知山線列車事故ご被害者対応本部副本部長。11年ジェイアール西日本メンテック常務。13年から現職。54歳。香川県出身。

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 ≪イチ押し≫

 ■総延長2.7キロのジオラマ 名所随所に

 トロッコ嵯峨駅内にあり、西日本最大級の大きさを誇る「ジオラマ京都JAPAN」。京都の町家の町並みをイメージした12×17メートルのジオラマに金閣寺をはじめとする観光名所が随所に再現されている。HOゲージのレールの総延長は2.7キロに及ぶ。昭和30年代の「つばめ」やハリーポッターにも登場する赤い機関車など常時2~3編成が稼働。また、有料で新幹線の0系や500系などの操作もできる。

 「目玉は実際に運行していた電気機関車『EF66』の45号機と49号機の運転席」と同館担当の北野暢一さん。車内のマスターコントローラーなどを操作すると、ジオラマ内で同じ車両が動き出すしくみになっている。館内は1時間に一度、「夜」になり、天井に埋め込まれた約2万2000個の発光ダイオード(LED)や光ファイバーが満天の星を再現している。

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