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【21世紀を拓く 知の創造者たち】燃料電池開発に挑み水素社会に貢献
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後藤哲哉さん □東レ 先端材料研究所 新エネルギー材料研究室
東レは、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献するグリーンイノベーション関連研究を積極展開し、持続可能な循環型社会実現への貢献を目指している。グループの総力を結集し開発を進めているのが太陽電池バックシート、リチウムイオン二次電池セパレーター、燃料電池関連部材の水素タンク用炭素繊維、電極基材、電解質膜など。これら新エネルギー分野は、より高性能で低コスト化へつなげる研究・技術開発が求められている。どのように実現へと導くのか、研究を指揮する所長、室長と、燃料電池開発に挑む若き研究者に語り合ってもらった。
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□後藤哲哉さん 燃料電池大きな柱
▽ごとう・てつや 専任理事 先端材料研究所所長 工学博士
□希代聖幸さん 要望に沿う素材を
▽きだい・まさゆき 主幹 新エネルギー材料研究室室長
□出原大輔さん 新しい価値を創造
▽いずはら・だいすけ 主任研究員 工学博士
□宇都宮将道さん 新たな用途開発へ
▽うつのみや・まさみち 所員
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--先端材料研究所の概要を説明してください
後藤 当研究所は環境・エネルギー、少子高齢化などの問題に対するソリューション提供に貢献する革新基幹素材の創出と、高分子化学に立脚した革新的な材料の基礎研究を目的として2010年6月、滋賀事業場内に設立されました。ターゲット市場と研究テーマに沿って新エネルギー材料研究室、医療システム研究室、先端構造高分子材料研究室の3つの研究室を設けています。
希代 新エネルギー材料研究室は、有機薄膜太陽電池やリチウムイオン二次電池、燃料電池自動車や家庭で使用する固体高分子形燃料電池(PEFC)向け素材の研究を担っています。特に燃料電池では、水素から電気をつくり出すスタックという部材に用いられる、カーボンペーパーを主材とするガス拡散層、炭化水素系高分子からなる電解質膜など、東レの炭素繊維、高分子合成技術を活用して顧客の要望に沿った素材を作りだすのがミッションです。
--みなさんが担当する研究、自覚するミッションなど教えてください
後藤 所長として全体の研究を統括する立場ですが、研究所に閉じ籠もってばかりではなく、大学の研究室や顧客企業との連携を図りながら、研究テーマの進め方を検討しています。社内的には他の研究所に蓄積されている研究成果、ノウハウを見つけ活用することを意識して取り組んでいます。各研究員よりは多少の経験と視野の広さをもっていると思いますので、彼らに提案する役割も重要な任務だと考えています。
希代 リチウムイオン二次電池や燃料電池ではそれぞれ10年以上の研究経験があります。新エネルギー材料研究室をまとめ上げる役割ですが、現場レベルで研究者とディスカッションしながら各研究をみていくことがミッションであると認識しています。2020年には燃料電池が活躍する水素社会が到来するでしょう。その時、東レが貢献できるよう事業化へつなげるための研究をコントロールすることが重要と意識しています。
出原 燃料電池の重要部材となる電解質膜の研究グループリーダーで、高分子化学の専門を生かして、世の中にはない革新的な電解質膜を創出することが役割です。東レは、材料研究だけでなく、国内外の顧客と一体となり、顧客と同じ装置を使い発電性能や耐久信頼性評価を行っています。具体的には燃料電池車が過酷な状況にも耐えられるか、つまり電解質膜が10~20年使い続けられるかなどの試験を実施する日々です。
宇都宮 私は燃料電池の主要部材であるガス拡散層の構造設計を担当しています。ガス拡散層は炭素繊維を紙すきの要領で層にしたもので、これは文字通りガスを拡散する層なのですが、水を排出させ同時に電気を通し、熱を逃がさなければなりません。電解質膜を支える機械特性も必要であり、構造設計は非常に重要です。導電性があり、腐食しないことから炭素繊維はガス拡散層の材料として最適です。
--日々の研究を続ける中で課題があると思います。どのような内容でしょうか
後藤 冒頭に述べましたが当研究所は3つの研究室がありますが、それぞれの研究者の知見が交流でき有効活用できればいいのですが、これが難しい。研究発表会などで初めてこんな研究があるのか、と知る研究者が多いのが現状です。ジャンル、技術体系、要素技術が違う研究が集まっているのにお互いの研究を知らないのは、もったいないことだと思っています。
希代 燃料電池、リチウムイオン二次電池は研究ステージが異なるため、それぞれ顧客との対応や研究の進め方の効率化が課題です。また、長期間にわたる研究期間であってもマイルストーンを社内と顧客の双方で確認し合い、目標とする事業化時期のコンセンサスをとりつつスピード感をもって研究を進めていくことです。流されずに取り組まなければいけません。
出原 技術的な課題になりますが、燃料電池の電解質膜は、フッ素系材料がデファクトスタンダードになっています。われわれが取り組む炭化水素系は、新材料であり長時間運転した実績が少ないなど後発になります。他社との厳しい競争に打ち勝てば、自分が創出した新素材を搭載した自動車が世の中に出ることになり、新しい価値を創造するという点でやりがいがあります。
宇都宮 燃料電池は多くの部材で構成されていますので、いかに他の部材と相性の良いガス拡散層を提供していくか、搭載する他の自動車部材までを考慮して研究することが、クリアしなければいけない課題です。炭素繊維の魅力を見つけ出す研究ともいえるので、やりがいがあります。
--今後の目標や将来展望など聞かせてください
後藤 地球環境に配慮した産業を志向することです。グリーンイノベーションは東レの方針であり私の理想です。その意味で現在の研究は来るべき社会に寄与します。2020年以降には、燃料電池が東レの事業の中で大きな柱になると確信しています。
希代 電池に関する研究を材料研究から手掛け、ようやく世の中に出していく段階になりました。これを機に他の電池材料の研究も手掛けていきたいですね。それが世の中の役に立つし会社への貢献にもつながります。
出原 水を電解して水素を作り出す、燃料電池の逆反応も研究しています。東レの炭化水素系膜は、例えばガス透過性が非常に低いという長所があって、水電解や水素圧縮には最適な材料です。これを用いることで、再生可能エネルギーと組み合わせた水電解水素製造を可能にしていきたいです。
宇都宮 炭素繊維は軽さと強度が注目されていますが、それ以外にも電気抵抗が小さく、ガス拡散層の材料として使用ができるなどの特徴があります。ガス拡散層の研究をさらに深化させて新たな用途開発へとつなげたいです。
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【会社概要】東レ
◇本社=東京都中央区日本橋室町2-1-1 日本橋三井タワー
◇社長=日覺昭●氏
◇売上高=1兆8378億円(2013年度連結)
◇設立=1926年1月
◇社員数=4万5881人、うち海外2万8511人(2014年3月末現在)
◇事業内容=繊維、プラスチック・ケミカル、情報通信材料・機器、炭素繊維複合材料、環境・エンジニアリング、ライフサイエンスなど各製品の製造・販売
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フジサンケイビジネスアイは「独創性を拓く 先端技術大賞表彰制度」を設けております。このシリーズは2014年の運営に協力いただきました協賛企業の研究開発活動を紹介するものです。
●=うかんむりに黄