--資源価格が下落する中で豪州で炭鉱を開山したが資源・エネルギー開発への取り組みは
「資源投資は20年、30年の計だ。2014年10月に豪州のキャバルリッチ炭鉱を開山したのは、巡り合わせで資源安の時期に重なった。やめる選択肢はなかった。競争力のある炭鉱を開山する一方でコスト削減への投資は惜しまず、構造改革も進めた。この数年で強みの原料炭に加え、チリ銅鉱山の追加投資で資源ポートフォリオが出来上がり、20年ごろに持ち分生産量を12年に比べ2倍にするシナリオは射程距離だ」
--非資源は20年ごろの利益倍増を掲げている
「10年度からの3カ年計画でグループの分権経営という縦軸を強化した。現在の3カ年計画では横軸を通すことで次世代収益への布石を打つ。医療・ヘルスケア、農業、シェールガス、環境、電力の5分野はグループを超え将来の新事業領域にする検討を開始した。これらと既存の47の事業領域を20年ごろに35~40に再編し、絞り込むことでより強固な態勢として、意欲的な目標数値を達成していきたい」
--食料資源への投資を活発化させているが、どのような現状なのか
「農業はブラジルの集荷事業から物流、消費国での販売までつなぐバリューチェーンができてきた。インドネシアでは、小麦の輸入から製粉▽山崎製パンとの製造▽現地のアルファーグループと組んだ小売りまでの一貫生産・販売が整った。ノルウェー政府からサケ養殖大手セルマックを買収し、安定供給に貢献する。天然資源の捕獲が難しくなっている中で食料資源と考えた。ノルウェーとチリ、カナダに養殖拠点を持つだけに病気発生のリスク回避や調達先の多様化の意味合いも大きい」
--第3次安倍政権に注文は
「長期政権になるので産業界と本音でやりあっていきたい。例えば元気な高齢者に働いてもらう環境整備は企業側にも受け皿の用意がある。企業で吸収できる分の社会保障費は多少削るなど、地道で現実的な対応が必要だ。国内事業では、楽天と組み仙台空港の民営化に応札した。三菱商事復興支援財団も活用して、東北の雇用創出や地方創生に協力したい」(上原すみ子)
こばやし・けん 東大法卒、1971年三菱商事入社。2003年執行役員、プラントプロジェクト本部長、常務新産業金融事業グループCEO(最高経営責任者)などを経て、10年6月から現職。東京都出身。