--2015年の事業見通しは
「電力・社会インフラ事業は、国内外ともに電力需要が高く、半導体事業も堅調だとみている。問題はヘルスケア事業で、世界の医療費削減の影響で画像診断装置の伸びが弱い。そこはゲノム解析など新規事業を伸ばしたい。全体的に良い年になるとみている」
--アベノミクスの評価は
「当社で言えば、円安に変わり、輸出が多い半導体や社会インフラ事業が追い風となった。半導体は、韓国の競合企業と戦える環境になったが、国内の電気代は、まだ韓国よりも3倍高い。今後、規制緩和や成長戦略、企業減税を打ち出してもらい、民間が国内に投資できる環境を作ってほしい」
--政府による法人税減税が決まった。賃上げに反映させるのか
「法人税減税イコール賃上げとは考えていない。業績が良ければ、ベースアップ(ベア)やボーナスなどで従業員に還元する。ただ、経済の好循環は、賃上げだけでは作れない。減税の分は、株主などにも還元したい。株主還元で国内の投資が増えれば、地域にも貢献できると考えているからだ」
--昨年、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が仏アルストムのエネルギー部門の買収に合意した。東芝のスタンスは
「当社はGEと、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた『コンバインドサイクル』発電、アルストムと、送変電・配電機器(T&D)部門で提携している。これらの分野で、GE・アルストム連合に入り、世界展開を狙える好機と考えている。GEとアルストムの提携協議が固まり次第、具体的な協議に入る」
--半導体事業は、韓国のサムスン電子との競争が激しくなっている
「サムスンと合わせて、『NAND型フラッシュメモリー』の市場シェアを7割持っているが、特にシェアにこだわっていない。NANDはスマートフォンやタブレット端末に加え、データセンター向けサーバーの需要も高く、年率30~40%伸びている。来年には3次元(3D)技術を使った生産も始める。成長する市場の中で、技術や品質を着実に高め、無理にコストを下げず、確実に利益を出すことにこだわりたい」
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【プロフィル】田中久雄
たなか・ひさお 神戸商科大(現兵庫県立大)商経学部卒、1973年東芝入社。執行役常務、執行役専務、取締役代表執行役副社長を経て、2013年6月から現職。兵庫県出身。