--鉄鋼市場の見通しについて
「昨年は消費税増税の駆け込み需要や(景気対策として)政府の公共事業のてこ入れがあった。今年は倉庫など物流関係の需要は好調だが、土木工事向けの需要は落ち込む見込み。一方、製造業は自動車の回復が鈍いが、円安の影響で建造が活発な造船業向けが増える可能性がある。2015年度の粗鋼生産量は1億1000万トン超と、13年度からほぼ横ばいの見通しだ」
--懸念材料はあるのか
「ロシアや欧州の経済状況の悪化があるが、アジアや米国が堅調に成長すれば日本の鉄鋼業への影響は少ないと考える。また、原油安は油田開発が遅れて油井管などの需要が減れば悪影響になるが、米国で大型車が売れるなどプラスに働く可能性もある」
--中国や韓国の供給過剰への対応は
「解消には時間がかかるので辛抱が必要だ。ただ、(不当廉売への輸入品の関税など)通商問題に日本が巻き込まれるのは避けなくてはいけない。官民の鉄鋼対話などで通商問題に発展しないよう努力を続ける」
--国内製鉄所の競争力をどう強化するのか
「設備が老朽化しているので、コークス炉などを中心にきっちりと更新していく。設備の更新投資は14年度で500億円程度だが、今後3年間は年約600億円に増やす。また、人材も団塊の世代が退職する時期なので、採用を増やして技能継承を徹底したい」
--台湾石油化学最大手の台湾プラスチックがベトナムで建設する大型製鉄所への参画要請を受けた
「ベトナムで高炉一貫製鉄所建設を計画してきたが、昨年9月に採算が厳しいと判断して中止した。だが、台湾プラスチックの製鉄所はすでに建設が進んでいる。アジアの鋼材需要が緩やかに伸びると考えれば、海外に製鉄所が必要だという認識は変わらないので本格的に検討していく」
--自動車でアルミなどの採用が進んでいる
「安全性を考えれば鉄は最高の素材だ。コストも考えれば、ほかの素材に大きく移行していくということはない。昨年10月に大型コンテナ船デッキ向けに厚さがあり強くても亀裂が入らない鋼材を発表した。自動車向けでも技術開発による協力しか答えはない」
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【プロフィル】林田英治
はやしだ・えいじ 慶大卒。1973年川崎製鉄(現・JFEスチール)入社。経営企画部海外事業管理室長、経理部長、JFEホールディングス専務執行役員などを経て2010年4月から現職。日本鉄鋼連盟会長も務める。神奈川県出身。