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【21世紀を拓く 知の創造者たち】“老化を科学”運動機能の低下改善へ
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出雲貴幸さん □サントリーウエルネス サントリー健康科学研究所
加齢とともに「つまずき」「歩行速度の低下」など運動機能の衰えに悩み始める高齢者は多い。身体の老化を防ぐ術はないが、せめて周囲の助けを借りずに暮らしたい、いつまでも健康で歩き続けたいと誰もが願う。その声に応えるため、サントリー健康科学研究所では「筋肉成分」と「軟骨成分」を一緒に取ることに着目した研究開発が進められてきた。こうして誕生した健康食品「ロコモア」に携わった研究者たちに、製品化へつなげるまでの軌跡、今後の展望などを語ってもらった。
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□出雲貴幸さん 世界トップの研究
▽いづも・たかゆき 開発研究グループ研究主幹 薬学博士
□神崎範之さん 積極的に成果発信
▽かんざき・のりゆき 開発研究グループ
□泰松 暁さん 多くの方に希望を
▽たいまつ・あき 商品開発グループ
□北原 望さん 視野を広げ海外に
▽きたはら・のぞみ 商品開発グループ
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--取り組まれている研究開発テーマの概要を教えてください
出雲 健康に役立つ素材を探し出し、その力を最大限生かせるよう、有効性と安全性を科学的に検証し、健康食品や化粧品として開発しているのがサントリーグループの一員である当社の事業です。研究所では、「老化を科学する」をテーマとして掲げており、その一つに脚の老化に着目した研究開発があります。2001年に健やかな歩みに必要な軟骨成分を配合した「グルコサミン&コンドロイチン」を、13年6月には筋肉成分と軟骨成分を同時に補える「ロコモア」を商品化しています。
神崎 07年に日本整形外科学会が、運動器の障害で要介護になるリスクの高い状態になることを「ロコモティブ・シンドローム」(運動器症候群)として提唱しました。これを受け今までよりも広範囲に人の運動器に働きかけるべきという考え方から「ロコモア」の研究が始まりました。私たちは、これまでの膝関節の健康だけでなく、そのまわりをサポートする筋肉にも着目しました。
--チームの中での担当について、どのような役割なのですか
出雲 私はマネジャーとして、「運動器」と「腸の老化」の2領域を担当しています。複数あるテーマの進捗状況を見極め、実験などで得られたデータをもとに次の研究方針を決めていくのが主たる業務です。「異質の知の交流」と表現していますが、運動器、腸の各領域の研究者だけでなく、サントリーグループの他分野の研究者を集めディスカッションする場を設け、その中から新しい気づき、価値を創出することも重要な任務と意識しています。
神崎 食品成分の知られざる価値を見つけだし、機能を解明していく研究開発が私の役割です。成分を研究し進化させていくには、ヒトでの検証に基づくデータ収集を重ねる必要があり、日々、地道で根気が必要な作業を続けています。直近では「軟骨と筋肉に役立つ食品成分の摂取により中高年の通常歩行速度が上昇する」ことを確認し、13年の日本老年医学会学術集会で発表しました。
泰松 研究成果で得られた知見をもとに実際の商品を作るのが私の担当です。簡単に言えば、成分を組み合わせ、飲みやすい形状にすることですが、その段階で最も神経を使い重視しているのが品質です。原材料は世界中のどこへでも出向いて自分の目で安全性を確認してきますし、国内の生産工場にも頻繁に通いチェックしています。万が一のことも絶対に許されませんから。粒の大きさ、どのような形にするかなど商品化には独自技術が集積されています。
北原 私も泰松と同じ商品化に関わる業務に携わっています。優れた成分をうまく形状にするだけでは足りません。毎日続けていただくものですから味を含めた飲みやすさを実現することも私たちの仕事です。お客さまに長く受け入れられる商品の特徴を研究したり、健康食品以外の業界からも取り入れられるものがないか探ったりしています。品質重視で、厳しい管理姿勢と緊張感をもって日々、臨んでいます。生産や研究の現場を大事にしていて、一時期は、工場の人から「ここに住んだら?」と言われるほど各地の工場に通い詰めていました。
--現状の課題、克服すべきことは多くあるのでは
出雲 一般的に健康志向は強まっているのですが、ロコモティブ・シンドロームという言葉自体の認知度はまだ低いですね。もっと広めていかなければいけないと考え、大学教授や有識者などとのネットワークを広げ、自社だけでなく世の中全体の取り組みからロコモを知ってもらえるよう啓発活動を展開しています。理解を深めるツールやセミナーなどで情報発信を積極化していく考えです。
神崎 効率的で効果的な検証データの収集は課題です。基本的には地道にやるしかないのですが、少人数での検証は個人差が出る可能性もあるので、大学などの研究機関と連携した大規模な取り組みが不可欠です。運営は複雑化するのですが、世の中に役立つ商品開発のためですから、産みの苦労はつきものだと考えています。
泰松 課題というより商品化の第一歩と言うべきことですが、商品の品質レベルを一定に保つための取り組みも重要です。自然由来の原材料の場合、自然災害などで供給が滞ることも想定していかなければなりません。そのため、常に高品質な原材料を安定的に調達できるよう、複数の産地を確保するなど体制を強化しています。
北原 原材料の開発は未知数だからこそ、多様な素材を探っていく研究はやりがいがあります。また、粒の大きさや成分など現状に満足することなく時代の変化を考慮して、さらに改良していく必要があると思います。製剤技術の向上を目指すだけでなく、飲む方の心理までを読み取るなど、奥が深い分野だと感じています。
--今後の展開や将来の夢など聞かせてください
出雲 健康に国境はありません。国内だけでなく世界に視野を広げて健康問題を解決していきたいと考えています。海外の研究機関と共同研究も進めていますし、将来的には私たちの論文がその分野での論文引用数ナンバーワンになるなど、世界トップレベルの研究を目指したいと思います。
神崎 食品分野の中では比較的新しい研究テーマですので、これまでの成果や今後の研究結果を、論文、学会発表を通じて世界中に積極的に発信していきたい。運動器の老化と食との関係を究めること、それをサントリーとして提案することで、世の中に貢献していくことを目標としています。
泰松 食べることは楽しい。これが薬との違いなので健康食品には夢があると考えています。いつまでも元気に歩き続けたいと「ロコモア」を買ってくださるお客さまは、その先に孫と遊びたいなどの希望があるはず。だから私たちの商品は社会を明るくする効果もあると思っています。健康食品を通じて多くの方に希望を感じてもらえることが私の夢です。
北原 入社6年目ですが夢は年々膨らむばかりです。やりたいことは多いのですがサントリーが世界にフィールドを拡大していることもあり、海外で活躍するのが当面の夢です。これは実現に向け努力中です。できれば健康食品で培った知見を飲料など別の分野でも発揮していきたいと考えています。
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【会社概要】サントリーウエルネス
◇本社=東京都港区台場2-3-3
◇代表取締役社長=川崎益功氏
◇設立=2009年4月1日
◇資本金=5億円
◇事業内容=サプリメントやスキンケア商品を中心とした健康関連事業
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フジサンケイビジネスアイは「独創性を拓く 先端技術大賞表彰制度」を設けております。このシリーズは2014年の運営に協力いただきました協賛企業の研究開発活動を紹介するものです。