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テレビの「録画再生率」スタート リアルタイム視聴率と逆転現象も

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テレビの「録画再生率」スタート リアルタイム視聴率と逆転現象も

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11日放送のフジテレビ系「残念な夫。」から。妻、知里(倉科カナ)が働きに出ることになり…  調査会社のビデオリサーチ(東京都千代田区)は1月から、テレビ番組の録画再生率(タイムシフト視聴率)について、テレビ局などに本格的なデータ提供を始めた。各局はデータの大半を公表していないが、昨年の試験結果と同様、ドラマの再生率が他の番組より高く、リアルタイム視聴率と必ずしも連動しない傾向が表れているようだ。(三品貴志)

 クール通し比較必要

 TBSによると、同局の1月期ドラマの初回で最も高い録画再生率を記録したのは、金曜ドラマ「ウロボロス~この愛こそ、正義。」(金曜午後10時)で10・8%だった。また、フジテレビで初回の再生率が高かったのは「残念な夫。」(水曜午後10時)で8・2%。「デート~恋とはどんなものかしら~」(月曜午後9時)が5・7%で続いた。

 フジテレビの場合、初回のリアルタイム視聴率では「デート」(14・8%)が「残念な夫。」(9・4%)を上回っていたが、録画再生率では逆転現象が起きた形だ。「残念な夫。」に関しては、インターネットの無料見逃し配信サービスでも好調な再生回数を記録しているという。

 民放幹部は「数字は2話目以降で変動しており、初回だけを比べて、どうこう言うのは難しい。録画再生率の場合、クールを通して比較した方がいいのかもしれない」と指摘している。

 営業活用は慎重姿勢

 録画再生率は、録画機器の普及で広がった新たな視聴実態を示す指標として期待されている。ただ、リアルタイム視聴率を基に営業活動を行う民放は、いずれも新指標の扱いに慎重な姿勢を示している。

 フジテレビの亀山千広社長は1月30日の記者会見で、「録画再生率の結果が自己満足になってはいけない。とにかく大切なのはリアルタイムだ」と強調。別の民放幹部も「参考値にすぎない」と語り、録画再生率を営業活動に活用することには否定的な見方が根強い。

 ビデオリサーチの昨年の試験調査では、録画再生中も約5割のCMが飛ばされずに視聴されていたという結果もあった。ただ、民放幹部は「CMを飛ばせないサービスもある米国と違い、日本の場合、親の敵のように早送りボタンを押せる環境になっている」と語り、懐疑的だ。

 民放各局は近年、ドラマの登場人物が登場する連動CMを制作したり、ネットの無料動画配信サービスで飛ばせないCMを挿入したりと知恵を絞る。時代に即した効果的なCMづくりに試行錯誤している。

 ■「大人の女性向け」模索?! 各局連続ドラマ

 幅広いジャンルのそろった1月期の連続ドラマ。中でも目立つのが、女性を主人公に、結婚や家族のあり方、さらには現代人の生き方に一石を投じる“女性目線”のドラマだ。

 例えば、日本テレビ系「◯◯妻」とフジテレビ系「デート」は、作風は異なるが、結婚を「契約」と見なす男女を通じて、夫婦・家族観を問い直すようなテーマが見え隠れする。

 日本大学芸術学部の中町綾子教授(テレビドラマ表現分析)は「切り口が大胆で、確信的な挑戦をしているようなドラマが目立つ。あえて特徴を言えば、各局が『恋愛』『仕事』『家庭』という枠に収まりきらない、大人の女性に向けたドラマ作りを模索しているように感じる」と話す。

 NHKBSプレミアムだけを例に挙げても、主婦に嫌気がさした女性のロードムービー「だから荒野」▽32歳独身女性の何も起こらない日常を描いた「徒歩7分」▽60代女性のアクションサスペンスコメディー「アイアングランマ」-というラインアップが並ぶ。

 民放でも、主婦目線で夫の残念さが描かれていくフジ系「残念な夫。」▽女たちが男社会に反旗を翻す同「問題のあるレストラン」▽不幸なアラフォー女性3人が怪奇現象を呼び寄せるテレビ東京系「怪奇恋愛作戦」-と多種多様。

 各作品で描かれているのは、女性の生きづらさであったり、男性の鈍感さであったりとさまざまだが、紋切り型のジャンルにとらわれず、女性の「今」を描き出す試みが広がっているといえそうだ。

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