ニュースカテゴリ:企業
自動車
【浜松物語 「やらまいか」精神を訪ねて】(2)
更新
ハスラーの発表会でメディアからの撮影依頼に応じる鈴木修氏(右)=2013年12月、東京都新宿区 □鈴木修スズキ会長兼社長(2)
■冒険せず「金になる車」造る
--群雄割拠の浜松で泥仕合にならなかったのか
「それはありましたよ。ホンダさん、ヤマハさん、スズキオートバイ」
--「相手をたたきつぶそう」という気持ちはあったのか
「どうぞ、どうぞ、だよ」
--互いに切磋琢磨(せっさたくま)するというプラス効果もある
「切磋琢磨っちゅうのは両方がやる場合に切磋琢磨だけど、一方がやるだけじゃ駄目だよ。それは謀略です」
--そんなときどう対抗する
「いや、もう放ってあるんですよ」
「放っておいたらいいですよ、そんなの。そんなことにエネルギーを使う暇があったら本業をしっかりやったほうがいい。俺は美濃(岐阜県)の出身だけど、(歴史小説『国盗り物語』で知られる)斎藤道三っていう、俺はそんな悪じゃねえ。フェアプレーの精神で行く」
--ホンダが軽自動車のスポーツカーを出したとき、「軽は貧乏人の乗る車で、スポーツカーなんていらない」と述べた
「うん、そう。だから、ハスラーが誕生した。うちらのような場合には趣味で、あんまり売れなくても趣味でいいというようなスポーツカーだとか冒険はできないんですね」
「実は、悔しいけど。ホンダさんとかダイハツさんは1モデルぐらい売れなくてもシンボルとしてスポーツカー造らせてるんですよ。うちらはその力がないから。1モデルでも金になるモデルを造らにゃいかんっていうことになるから、そういうことですよね。だから、うちでもホンダさんがスポーツカー造られたとか、ダイハツさんがスポーツカー造られてうちも造りたいって言ったけど、これは私が認めなかったんです」
--その結果、人気車ハスラーが誕生した
「で、カーオブザイヤー取った。金になったってことです」
--世間からみれば、スズキは堂々たる大企業であり、貧乏人でも中小企業でもない
「現実がそうだからね。売上高はトヨタさんが26兆円で、日産、ホンダさんは13兆円までいってないもんね。それで俺のとこがまたホンダさんの4分の1ですからね」
「自分は貧乏人であると自ら言うということでないと駄目なんです」
--今年4月からの軽自動車税増税について、「弱い者いじめをするな」と、消費者の感性に訴えた。ネットで若者の間で話題になった
「『弱い者いじめ』って流行語大賞の候補になりゃよかった」
「俺はストレートだからね。むつかしい言葉を使うことが嫌い。また、むつかしい言葉を考える頭脳はないから、率直に話をするということじゃないかね」(聞き手は産経新聞特別記者 田村秀男)