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【シリーズ 産業未来】国際石油開発帝石(上)(4-3)

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【シリーズ 産業未来】国際石油開発帝石(上)(4-3)

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13年末に完成した直江津LNG基地(新潟)。年150万トンの受け入れ能力を持つ  ≪ガスサプライチェーンと再生エネの強化≫

 ■総延長1400キロ、パイプライン網拡充

 国際石油開発帝石(INPEX)が2020年代に向け示した「INPEX中長期ビジョン」の中で掲げた成長目標は、国内外における石油や天然ガス開発といった『上流事業の拡大』だけではない。自社が保有する海外ガス資産と国内ガス市場を有機的に結び付ける『ガスサプライチェーンの強化』や、『再生可能エネルギーの取り組み』も強化する方針だ。北村俊昭社長は「これら3つの成長を通じて、中長期目標の実現を目指す」と語る。

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 INPEXの国内での天然ガスの生産量は日量約360万立方メートル。国内販売量は14年3月期で17億9000万立方メートルだ。これを「INPEX中長期ビジョン」では20年代前半に年25億立方メートルに、長期的には30億立方メートルにガス供給を増やすことを目指している。

 ◆国内最大級の「南長岡」

 国内の天然ガス生産の中心は、オペレーター(操業主体)として国内最大級の生産量・埋蔵量を誇る「南長岡ガス田」だ。新潟県長岡市の南西約10キロに位置し、1984年から天然ガスとコンデンセート(特軽質原油)の生産を開始。実に30年以上にわたり安定的に生産してきた。生産量は天然ガスが日量1億2300万立方フィート、コンデンセートが日量約3100バレル。生産された天然ガスは越路原プラントと親沢プラントで精製・処理されている。

 さらに、昨年秋には越路原プラントの昇圧機やセパレーターといった井戸のガス送出能力を向上させるための設備増強に着手。ガス田の回収率を向上させ、天然ガスとコンデンセートの可採埋蔵量が約2割増加し、また生産期間についても想定から20年弱程度延長されると見込んでいる。設備の増強により、貴重な国産エネルギーを有効に活用する狙いだ。

 約1400キロメートル-。INPEXが関東甲信越に保有する天然ガスパイプラインの総延長だ。1962年に国内初の長距離高圧天然ガス輸送パイプライン「東京ライン」を敷設。その後も天然ガスパイプライン網を拡充し、国内や海外で生産された天然ガスを都市ガス会社や工場などの需要家に届けている。

 さらに、2016年の供用開始に向け、新潟県糸魚川市から富山県富山市を結ぶ約102キロの天然ガスパイプライン「富山ライン」を建設中だ。地元のガス会社に天然ガスを卸販売する計画で、国内の天然ガスパイプラインのネットワークを一段と拡充する。

 ◆国内外のLNG受け入れ

 もちろん、国内で生産される天然ガスだけでは、堅調に増加するガス需要量を賄えない。そのためには国内だけでなく、海外からもLNG(液化天然ガス)を受け入れられる基地が必要になる。

 そこでINPEXは、13年12月、新潟県上越市にLNG年間約150万トンの受け入れ能力を持つ「直江津LNG基地」を完成させた。国産天然ガスに加え、海外からのLNGを受け入れ、供給源の多様化と長期安定化を実現する要衝となる。

 INPEXがオペレーターとして開発中のオーストラリアのLNGプロジェクト「イクシス」や、インドネシアで同じくLNG案件として開発準備作業中の「アバディ」が生産を開始した後も、両プロジェクトからのLNGを直江津LNG基地で「受け入れられる能力は十分にある」(北村社長)という。

 海外で自主開発したガス田からLNGを安定的に受け入れられるだけでなく、急激に海外で市況が変化したとしても、国産ガスによるバックアップ態勢が整うことになる。

 直江津LNG基地でイクシスなどから生産されるLNGを受け入れ、約1400キロのパイプライン網を通じガス販売を強化。一段と強固なガスサプライチェーンの構築を目指す。

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 ■探鉱・掘削技術を活用各地で地熱発電事業

 「INPEX中長期ビジョン」で掲げる3つめの成長目標が、再生可能エネルギーの取り組み強化だ。

 なかでも力を入れるのが「地熱発電の事業化推進」。日本の地熱エネルギー資源量はインドネシア、米国に次いで世界第3位。2009年時点では、約2300万キロワットに相当する。今後は有望な再生可能エネルギーとして政府による規制緩和や支援拡充も検討されており、INPEXとしても、積極的に事業化を目指していく方針だ。

 11年には出光興産と、北海道の阿女鱒(あめます)岳地域(赤井川村、札幌市)と秋田県の小安(おやす)地域(湯沢市)で、地熱発電所建設に向けた第1段階の共同調査を開始した。13年からは出光興産と三井石油開発、INPEXの3社で、1700~2200メートルの構造試錐井掘削により地質構造や地下の詳細な温度、透水性などを調べる第2段階の調査を開始し、両地域ともに地熱発電が可能な200℃以上の地下温度が確認された。

 引き続き両地域においては構造試錐井の掘削調査を継続し、それらの結果を評価したうえで試験井の掘削や環境影響評価といった第3段階の調査への移行を検討することとしている。

 地熱発電を強化する理由を北村社長は「地下の資源を開発し見極めるという、石油・天然ガス事業の技術と類似している」と説明する。これまで培ってきた石油・天然ガスの探鉱や掘削といった技術を再生可能エネルギー事業にも生かそうという考えだ。

 石油や天然ガスを核に総合エネルギー企業へ、どう飛躍できるのか。「INPEX中長期ビジョン」で掲げる3つの成長事業の成否が、そのカギを握っている。

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