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【物流イノベーション】日本郵便の挑戦(2-2)

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【物流イノベーション】日本郵便の挑戦(2-2)

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「無添加で新鮮さが商品の特徴です」と語るCS向上課の石原由実子課長代理  ≪「大型郵便受け箱」設置普及の取り組み≫

 ■多様な形状に対応 再配達を減らし物流効率を高める

 日本郵便は昨年10月、ネット通販大手のアマゾンと住環境メーカーであるナスタの2社と協力し、大型郵便受け箱「D-ALL(ディーオール)」の設置普及に向けた取り組みを開始すると発表した。ネット通販市場の拡大で多様な形状の荷物の増加に対応し、差し入れ口の大きい郵便受け箱の設置普及を進める。これまで配達できず持ち帰っていた荷物の再配達を減らし、物流効率を高めることが狙いだ。受取人にとっても商品を早く受け取ることができるなど利便性は高まる。

 この取り組みの背景にあるのは、新築マンションなど集合住宅に設置される郵便受け箱の差し入れ口の広さが、3センチ未満と狭くなっていることにある。「これは盲点でした」と日本郵便の津山克彦執行役員は振り返る。

 集合住宅は1階の共用部に郵便受け箱を設置することが義務付けられている。しかし、2階建ては対象外。この対策に日本郵便は力を入れてきた。配達の効率化を図るためには必要なことであったのだが、時代は変わっていく。総務省の規定では郵便受け箱の差し入れ口は2センチ以上に定められている。共有部の効率化を図ろうとすればマンションの郵便受け箱は小型化し、差し入れ口は小さくなる。

 「データをみると確かに持ち戻り件数が増えている。再配達が増えることはコストアップ要因につながり、これがEC市場の成長を阻害する可能性さえあると感じた」(津山執行役員)という。ポストインの物流は、利用者のストレスを無くし、配達する側の手間を省く。さらに通販事業者にとっても商品が迅速に届けば利用者増につながるメリットがある。「好サイクルを生み出せば、EC市場の発展に貢献できる」(同)と強調する。

 約1年の検討期間を経て大型郵便受け箱の試作品ができあがり、設置普及への取り組みが進み昨秋の発表となる。日本郵便は2016年3月末までに規格適合の郵便受け箱を設置したデベロッパーへ500円を払い普及を促す。4月1日から申し込み受け付けを開始した。

 発表から半年を経た段階での反響について津山執行役員は「予想以上にデベロッパーやハウスメーカーから問い合わせをいただいた。大型郵便受け箱は価格が従来品よりも高くなるので、導入を促すために手数料を払う対策を講じることにした。手応えはある」と話す。

 課題は戸建て住宅への普及だ。ハウスメーカーへの働きかけや、個人向けに利便性の高さを粘り強くアピールし、気づきを促すしか方法はない。「既存のマンションはリフォーム時に、戸建て住宅は地道な展開になる。マンションは20年、戸建てはもっと長いスパンで普及を進めていく」(同)と長期的に取り組む構えだ。

                  ◇

 <ユーザー、開発メーカーの声>

 □業界の常識を打ち破る大型化への発想

 ■商品受け取りの改善は当然の流れ

 大型郵便受け箱の考えは、日本での事業を開始し14年目となるアマゾン、住環境メーカーとして着実にお客さまの信頼を得てきたナスタ、そして日本郵便の3社が、各業界で課題となっていた再配達を軽減させる取り組みとしてスタートした。

 アマゾンは国ごとに異なる配送スタイルに合わせた展開を行っており、日本でも郵便事情に適合するサイズで商品を配送してきた。

 当初は書籍、DVDなど比較的薄い商品が主流であったが、ネット通販市場の拡大に伴い、扱い商品も食品、衣服など大型化している。

 「利便性を考えると箱を小さくすることと、大きくても郵便受けに配達できること、両面の対応が必要ではと考えた」と輸送事業部輸送サービス開発部の日南田英介部長はいう。逆転の発想といえる。

 この考えを実現するため、郵便受け箱で業界大手であるナスタの笹川順平社長に郵便受け箱の差し入れ口を広くしたいことを伝えた。

 「要望を聞き、メーカーとして利用者の声を吸い取っていなかったと反省した。再配達で顧客はストレスを感じているはず。現場からも同様の声が挙がっていたが、対応できていなかった。顧客満足度を高めるためにはやるべきと即決しました」と笹川社長は語る。

 EC市場が伸びている状況をみれば、商品の受け取り方法を改善していくのは当然の流れでもある。「なぜ、行動に移せなかったのか」ともいう。

 開発期間は1年。郵便受け箱全体の寸法を変えずに差し入れ口を広げると強度と盗難の問題が発生する。これをクリアする工夫に時間を要した。とくに盗難への配慮は差し入れ口に細分化した弁状の装置をつけることで解消。まさに郵便受け箱のイノベーションを実現したことになる。

 発表後はマンション、アパート向けへの浸透スピードが速く、デベロッパーからの問い合わせも殺到。新築集合住宅の郵便受け箱シェアで「6~7割を目指していける状況だ」という。

 「メーカーとして物流の円滑化という社会的インフラにアプローチできた喜びは大きい。開発に携わった社員も意欲的に取り組めた。何よりもお客さまのためになる仕事をさせてもらったことに意義を感じる。今後も世の中に役立つ仕事を精力的に進めていく」と笹川社長は力強く語る。

 商品の受け取り方法の改善では、アマゾンも「迅速な配送サービスを提供することは、【地球上でもっともお客さまを大切にすること】というビジョンを達成するためにもっとも重視しているテーマの一つです。今後も引き続きサービスの向上に取り組んでいく」(日南田部長)と物流面での利便性向上への努力は終わらないという。

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