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【ITビジネス最前線】高価な概念覆す教育玩具ロボ

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【ITビジネス最前線】高価な概念覆す教育玩具ロボ

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米ダッシュ・ロボティクスが開発した教育用のロボット「ダッシュ」。6本の足をモーターで動かし、最速で秒速1.8メートルのスピードを出せるという  ■米ダッシュ・ロボティクス 65ドル以下で提供

 私たちがロボットと聞いて思い浮かべるのは大抵の場合、ずうたいの大きな金属の塊だ。最近でこそ、すばしっこい「お掃除ロボット」なる家電も登場しているが、典型的なロボットの効果音といえば「ウィーン」。扱いづらく、ゆっくりと動くのが特徴ではないだろうか。そんな概念を覆すロボットが米サンフランシスコ・ベイエリア(湾岸地域)のスタートアップ(ベンチャー企業)、Dash Robotics(ダッシュ・ロボティクス)によって生まれた。

 ◆オリガミ感覚

 カリフォルニア大学バークレー校博士課程在籍中の学生による研究プロジェクトとして始まった小型の組み立て式ロボットは、自然界の原則に倣ったデザインで、動物や昆虫の走りを再現する。大人の趣味として楽しいのはもちろんだが、特に子供たちが科学、エンジニアリング、生物学などを自発的に学ぶのに最適だ。

 創業したのは、現最高経営責任者(CEO)のニック・コーハット氏、現最高執行責任者(COO)のアンドリュー・ギリーズ氏、現顧問でダッシュの原案をまとめたポール・バークマイヤー氏、現在はチームを去ったケビン・ピーターソン氏の4人。小学校や博物館で子供たちがダッシュを組み立てる姿を見て、このプロジェクトを単なる大学院のプロジェクトで終わらせてはならないと創業を決めた。顧問のポールは現在、非営利のコンピューティング研究機関SRIインターナショナル、ケビンはGoogle(グーグル)傘下でスマートホーム機器を製造するNest(ネスト)に勤務する。

 CEOは、ダッシュが高価なロボットのイメージを覆すことを期待している。ほとんどの教育用ロボットが最低数百ドルはするため、多くの家庭にとって現実的な選択肢ではないとニックは言う。ロボットで子供が楽しく学べることが分かっていても、高価なためにそれを敬遠してきた親たちでも、付属品を含めて65ドル(約7780円)以下というダッシュなら手が届きやすい。

 また、通常のロボットはいくつもの金属、プラスチック、ねじ、継ぎ目、ピンなどの部品からできていて、素人が組み立てるのは非常に難しい。組み立てを途中で投げ出してしまう人がいるかもしれない。複数の部品によって、製造コストとロボットの重量は増すばかりだ。

 ダッシュはこうした問題を解決する。子供でも手作りできるため、DIY(Do It Yourself)ロボット、または段ボールを折り曲げて立体的なロボットに仕上げることからオリガミロボットと呼ばれる。ダッシュは「動的」「自律型」「腹ばいの」「6本足昆虫」の英語の頭文字を取ってつけられた名前だ。名前から想像できるかもしれないが、6本足のゴキブリのように最速秒速1.8メートルで走るロボットである。とはいえ、日本で2012年に発売されたゴキブリ型ラジコンのようなリアルな見た目ではないので怖がる必要はない。

 購入した人に送られてくるのは、段ボールと接着剤とプラスチックがサンドイッチ状にプレスされた薄い板。これを、プラモデルを組み立てるように正確に折っていくだけで、1時間ほどでダッシュが出来上がる。必要なものは工作用ののりだけ。全長10センチ、重さはわずか20グラムの手乗りサイズで、28メートルの高さから落としても衝撃に耐えられるほど丈夫だという。

 6本の足は直流モーターで動き、より小さなサーボモーターがロボットの動きを変化させ左右に曲がることもできる。15分の短い充電時間で45分程度遊べるというのも遊びやすくてうれしい。

 ◆9月に正式発売

 ダッシュ・ロボティクスは13年10月、インターネットを通じて資金を集めるクラウドファンディングのハードウエア製造専門のサイト「ドラゴン・イノベーション」で、ベータ版1000台の製作費を調達した。以前コラムで紹介した複数のカード類を1枚にまとめるCoin(コイン)など、最初の製作費をドラゴンで調達するプロジェクトは少なくない。ダッシュが調達したのは、6万4000ドルの目標に対しおよそ7万6000ドル。資金のサポートをしたバッカーたちは14年夏から秋にかけてベータ版の製品を受け取った。

 15年9月に正式ローンチ(発売)が計画されているダッシュは現在、バッカーからのフィードバックを集め、次期製品を最高の教育玩具にすべくデザインの作業を進めている。ベータ版はオレンジ、黄色、青、黒の4色の展開だったが、昆虫をモデルにしたよりかわいらしいデザインが9月までに複数発表されるようだ。

 ◆プログラミング学習

 ダッシュは近距離無線通信規格のBluetooth4.0に対応しており、米アップルのiOSアプリ「DashDrive(ダッシュ・ドライブ)」をダウンロードすれば、自分のダッシュに名前をつけて目の色を決められるほか、スマートフォンのiPhone(アイフォーン)やタブレット端末のiPad(アイパッド)上でコントローラーを使って動きを操作できる。センサーを駆使して強い光源から逃げたり、迷路の中を進んだりする動きが初期設定されている。

 もちろんプログラミング教育用というからには、ダッシュに別の動きをさせるために自分でコードを書き換えることが可能だ。Arduino(アルドゥイーノ)言語による開発環境があればダッシュを踊らせることも、目の色を次々に変えることもできる。コードの例が公開されているほか、分からなくなったらいつでもオリジナルの動きに戻すことができるため、気軽に取り組める。

 子供の頃からプログラミングに親しむ教育が米国では盛んになりつつある。ゲーム感覚で学べるウェブサイトは非営利のCode.org(コード)やMITメディアラボのScratch(スクラッチ)、Khan Academy(カーン・アカデミー)のプログラミングコース、グーグルの提供するGoogle Blockly(ブロックリー)など数多くある。ダッシュのようにロボットを教育に使う例も蜂型のBeeBot(ビー・ボット)、元グーグル社員が開発したPlay-i(プレイ・アイ)、スクラッチによるプログラミングに対応するRomo(ロモ)など既にいくつも開発され、日本で手に入るものもある。

 しかし、ニック氏が指摘するようにほとんどの玩具ロボットは高価なのが実情だ。その点、ダッシュは手頃な価格で入手できるうえ、手先を使った昔ながらの工作とプログラミング学習が一つになっているため、子供がロボットにより愛着を持って学べるのではないかと期待している。

 先月末に140万ドルの初期投資を受け、合計調達額を150万ドルとしたダッシュ・ロボティクスは、長期的には教育用玩具市場の先を見据えている。自然界の生き物をモデルにした全地形対応型のダッシュはサイズ、重量、コストの点からも事故や災害時の救難作業に活用できるという。

 まずは、子供を持つ父親としてダッシュの正式ローンチを楽しみに待ちたい。もちろん、ローンチ後の経営戦略が気になるのは言うまでもない。

 文:イジョビ・ヌウェア

 訳:堀まどか

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【プロフィル】Ejovi Nuwere

 イジョビ・ヌウェア ニューヨーク生まれ。無線LAN共有サービスFON創業者の一人。ビジネスウイーク誌により「25人のトップ起業家」に選出される。ネットマーケティングのランドラッシュグループ株式会社、アジアと英語圏で展開するオンラインバイリンガル秘書サービスのKaori-sanを創業。

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