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【スポーツbiz】テレビで人気競技が見られない!?
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全英オープンで活躍した松山英樹選手。英国ではスポーツは公共財としての意識が強い=19日、英国北東部セントアンドルーズ(AP) 男子ゴルフの全英オープンは「ジ・オープン」と称される。1860年創設、4大大会のなかでも最も権威と格式を誇る。
聖地セントアンドルーズで開かれた今年の大会は前日まで妙技が繰り広げられた。多くの国々でテレビの前の視聴者をくぎ付けにしたことだろう。
◆スポーツは公共財
地元英国ではジ・オープンに限らず、先のテニスのウィンブルドン選手権など人気スポーツをテレビで楽しむ人は少なくない。観戦後、パブで酒を酌み交わし批評し合うことは英国庶民の楽しみとなって久しい。
ところが、1990年代に楽しみが奪われかねない事態が起きた。「20世紀フォックス」を率いるルパート・マードック氏が放送ビジネスのあり方を変えた。有料放送局が高額の放送権料でスポーツ放送を独占、加入者を増やす方式である。
ビジネスとしては画期的で、同時にスポーツ界も潤う。しかし、視聴には有料契約が必要となる。契約料を払いたくない、あるいは払えない庶民は楽しみを諦めなければならない。
事態を憂慮した英国議会は1996年に放送法を改正、国民の関心が高いスポーツイベントを特別指定行事と定め、独占放送を禁止する法律を制定した。スポーツは公共財とみなし、テレビ視聴権を確保すべきだとの考え方で「ユニバーサル・アクセス権」と呼ばれる。
椙山女学園大学・脇田泰子准教授の『スポーツ放送の発展とユニバーサル・アクセス権』を参照して話を進めている。
英国では98年に特別指定行事リストを発表。行事はA・B2つのグループに判別し、Aは基本的に独占を禁止、Bは有料放送の独占は承認するが、同時に地上波放送局による2次利用の権利を認めた。これによってハイライトやダイジェスト放送が担保された。
オリンピックやサッカーのFIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ決勝トーナメントはAで、UEFA(欧州サッカー連盟)の決勝トーナメント、テニスのウィンブルドンや競馬のダービー、ラグビーのワールドカップなどもA指定だ。ジ・オープンはBで、高額な放送権収入をめざす競技団体には一定の配慮がなされた。
英国の考え方は欧州委員会で承認され、今では欧州連合(EU)全体の取り組みとなっている。指定行事もドイツ、イタリア、フランスなど加盟国の事情に合わせられた。スポーツを公共財、文化とみなす欧州的な考え方の反映だといっていい。
◆無料放送を維持
一方でプロスポーツが発展し、産業化が進む米国での反応は鈍い。米国では早くから民間放送局のスポーツ独占が進んだ。オリンピックの高額な放送権料による1社独占をみるまでもなく放送局は多額のスポンサー収入によって無料放送を維持してきた。こうした傾向はまだ続くだろう。
しかし、スポーツ専門有料チャンネルや全国各地におけるケーブル放送の急速な普及は変革の可能性を含む。有料放送が人気スポーツの放送権を獲得し独占することを「サイフォン(吸い上げ)」といい、豪州は「反サイフォニング法」を制定し、ユニバーサル・アクセス権を守っている。米国でもこの法律が一時制定されたがケーブル放送最大手HBOが提訴、「言論の自由違反」と判断され無効となった。
やがて米国でも欧州のような現実が起きるかもしれない。
日本もユニバーサル・アクセス権への意識は低い。NHKの受信料を支払っているとはいえ安価であり、民放は無料だ。有料放送のスポーツ中継はまだ視聴率も低く、有力コンテンツとはなり得ていない。
根底にスポーツの持つ公共性や文化への意識の問題がある。スポーツのビジネス価値への評価も低い。もしも、独占契約を理由に大相撲や高校野球中継が有料化されたとしたら、どんな騒ぎが起きるか。ユニバーサル・アクセス権が議論される成熟はまだ遠い話だろうか…。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)