SankeiBiz for mobile

【健康と向き合い一世紀】(3)深まる親子のコミュニケーション

ニュースカテゴリ:企業のメーカー

【健康と向き合い一世紀】(3)深まる親子のコミュニケーション

更新

「カルピス」を作る体験が人を思いやる心を育む  観察調査では、「カルピス」を親子で作って飲むことが、親子のコミュニケーションを深め、子供が自分で考える力を育てることが見て取れた。さらに注目したいのは「人のためになにかをすること」や「もてなす体験」の重要性である。親子の映像の中では、母親のために作った「カルピス」を子供が差し出すという場面が何度も現れる。「おいしい」と言って飲む母親を見つめる子供の表情には、大きな満足感が感じられた。

                   ◇

 「おいしかったよ。また作ってね」と言われたことが自信となり、「誰かのためにしたことが喜んでもらえた」という成功体験として積み上がっていく。こうした「もてなす体験」は人を思いやる心を育み、心の成長と社会力・情動力の発達を促す機会となる。

 ◆挑戦への心の基礎づくり

 さらに、質問紙による調査では、他の活動の際の子供の様子と比較し、「カルピス」作りは「調理」や「お絵かき・工作」よりも、考える工夫をし、人を思いやる発言や行動が多く見られるという結果が得られている。「カルピス」を作るという作業そのものは簡便かつ安全で、小さな子供にも任せやすい。子供が自分なりに考えて工夫しながら取り組む場面を親が過剰な手出しをせずに見守ることができる。

 また、大きな障害にぶつかることなく短時間で結果を得られるため、子供が飽きずに集中しやすいという点も取り組みやすいのではないだろうか。一方、簡便でありながら、濃さを調整するなどの適度な難しさがあるからこそ、思考力も鍛えられる。最初は親に教わりながら、集中して取り組み、次第に自分の力でできるようになると達成感につながる。これは、子供が成長していく課程で出合う、あらゆる挑戦に立ち向かっていくための心の基礎づくりになることであろう。

 この調査結果を受けて、カルピス社との共同研究に携わった白百合女子大学文学部教授で生涯発達研究教育センター所長の田島信元氏は「子供の自立は究極の子育ての目標である」と語る。

 「子供は、親に面倒を見てもらってできたことをいつか自立的にやりたがるようになる。そして、それを家族や友達など、人のためにできるようになったとき、子供の経験は確実に身についていく。そして、その達成感や喜びを通じて、次の新しい活動への積極的な意欲となる」と、成長した自立心が次の一歩へとつながっていくことを示す。

 さらに、「親子のやりとりを通して、自身の成果をきちんと他者に対して自己表現していく能力や、きちんと他者の言うことを受容できる態度といった社会力も育つ」と、親子のコミュニケーションが生み出す効果についても指摘する。

 ◆子育てに取り入れる

 「『カルピス』を作るという活動は、子供が気軽に手を出せ、親も安心して任せられる側面がありながら、科学的・論理的活動である調理活動の側面もしっかりもっている。入門的な中にもしっかりと子供の成長・発達のために貢献できる優れた活動である」と、子育てに取り入れることの有効性を語った。

 大人になっても、懐かしい思い出としてほのかに残り続ける「カルピス」の記憶。それは、母親と一緒に作ったことや、さまざまな濃さに調整して好みの味にたどり着いたことなど、「作る」という行為によって、より強い印象となって刻み込まれている。“希釈して飲む”という独特の文化を持つ「カルピス」は、これまでも多くの人の心の成長に貢献してきたに違いない。

ランキング