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【ビジネスのつぼ】三井物産と植物育種研究所 タマネギ「さらさらゴールド」
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機能性タマネギ「さらさらゴールド」(三井物産提供) ■おいしさと機能性、消費者目線で追求
タマネギは、ジャガイモと並ぶ常備野菜だが、産地が違っても中身はそう変わらない。そんな常識を覆す高機能タマネギ「さらさらゴールド」が少しおしゃれなデザインで店頭にお目見えしたのは昨年10月だ。ポリフェノールの一種で、がんや糖尿病などの生活習慣病の改善に期待される「ケルセチン」が普通のタマネギの2~5倍なのが最大の特徴。開発の背景には消費者目線の機能性野菜で農業を変えたいとの思いがあった。
◆「大手ではできない」開発
開発を担ったのは、大手商社の三井物産と農業生産法人の植物育種研究所(北海道栗山町)の岡本大作社長。岡本氏は種苗大手、タキイ種苗に8年勤務した後「大手ではできない、もっと消費者目線に立った健康野菜を開発したい」との思いに駆られて2003年に起業したタマネギ博士だ。
タマネギは抗酸化物質が血液サラサラに役立つと注目されていたが、実は遺伝子要因が大きく、生まれが違うと成分も異なることが分かった。そこで全世界から300種以上のタマネギの品種を取り寄せた。一般にケルセチンは緯度の高い寒冷地産に多く含まれる。「厳しい環境であればこそ自分で身を守るために抗酸化物質を蓄えるから」と岡本社長は分析する。
ケルセチン濃度が高く、おいしい種同士を掛け合わせ、06年に栗山町農家と開発したのが赤タマネギ「さらさらレッド」だ。ファミリーレストランの食材にも使われたが大量生産できないのがネックだった。品種改良の試行錯誤の結果、12年に病気に強く量産と長期保存できる「さらさらゴールド」の開発につなげた。
一方、13年夏、岡本社長とタッグを組み販売や生産を支援し「事業化すれば日本の農業に一石を投じられる」と確信した三井物産北海道支社の浅居誠雄業務室主管は、社内を納得させる稟議(りんぎ)書に頭を抱えていた。立ちはだかるのは、収穫を左右する天候リスクへの社内の反発だ。投資基準をどうクリアし、経営幹部を納得させられるか。農業は息の長い商売だけに短期の投資利回りを営業から求められると厳しい。
だが、社内変革が追い風になった。三井物産は、11年6月に国内事業を推進する専門チームを立ち上げる。東日本大震災の被災地支援だけではなく、事業投資先として日本国内を見直し「地方創生」に貢献したいとの経営トップの考えからだ。そこに「おいしい健康タマネギで農家の収入を増やし、日本の農業を変えたい」との浅居氏の思いが合致し、地方発ビジネスの第1号の予算がついた。
三井物産は鉄鉱石や液化天然ガス(LNG)など資源開発やインフラが得意。一方で食品事業や農業分野は他社に水をあけられ、全社で「食と農業」の成長分野に取り組みたいとの社内事情も幸いした。
浅居主管にブランド展開のノウハウはなかったが、社内外のネットワークが突破口になった。都会の消費者にもアピールしようと、知り合いを通じ、アートディレクターの飯塚兼悟氏に白羽の矢を立て、おしゃれなデザインに仕立てた。グループの三井食品の販売支援も取り付け、百貨店や食品メーカー、ホテルの食材と販路を広げた。
転機は昨年、食品大手の大塚食品(大阪市)から打診された飲料向け原料供給の大口契約だ。
◆北海道産を世界に発信
今年4月。大塚食品はこの北海道産タマネギを使った飲料「しぜん食感 極ベジonion(オニオン)」をネット通販で限定発売した。タマネギを加熱し、まるごとすり下ろし食物繊維も摂取できるよう工夫。タマネギ特有の臭いも抑え、冷やして飲むとタマネギの甘さと蜂蜜風味が絶妙なバランスだ。札幌市のホテルの特別メニューやドレッシング、スープにも採用された。
世界中でなじみのある野菜だけに北海道産タマネギを世界に発信したいと、夢は膨らむ。4月に導入された機能性表示食品制度も視野に入れ、今年の生産は昨年の5倍強の500トン、17年には2倍の1000トンを目指す。(上原すみ子)