【高論卓説】東芝は本当に反省しているのか 過少な賠償請求…「不正なし」なお強調
更新賠償請求額を3億円としたのも、「犯罪ではない」という前提に立っている。任務懈怠(けたい)によって「法的観点から相当因果関係が認められる範囲内の損害の一部」ということで、粉飾した過去の決算を訂正するために要した監査法人への支払い報酬や、東証から課された上場契約違約金9120万円などに限っている。しかも、「回収可能性等も勘案した額」としているのだ。
5人で3億円といえば、庶民感覚では払える限度額に近い感じもするだろう。だが、提訴された一人である西田厚聡・元会長は、粉飾で利益をかさ上げしていた2010年3月期から2014年3月期の間だけでも6億3500万円の役員報酬を手にしている。利益をかさ上げしなければ、そんなに多額の役員報酬を得ることは不可能だった可能性が高く、本来なら全額返済してもいいはずだ。
同じく訴えられた一人である佐々木則夫・元副会長も、開示されている2012年3月期からの3年間だけで3億2800万円の役員報酬を得ていた。田中前社長も開示されている2014年3月期1年間だけで1億1100万円を得た。だが、こうした報酬は今回の損害賠償額の算定には一切含まれていない。
