【高論卓説】東芝は本当に反省しているのか 過少な賠償請求…「不正なし」なお強調
更新会社が損害賠償訴訟を起こしたのも、不正会計の反省に立って自ら率先して行ったものではない。株主から請求されたからで、放っておけば株主が会社に代わって訴訟を起こす株主代表訴訟に発展していた。その期限が迫っていたのだ。会社が元役員を訴える当事者になることで、当然、「なれ合い」訴訟になることが懸念される。
もう一つ驚いたのは、米国で起きている集団訴訟への対応だ。米国では東芝のADR(米国預託証券)が発行され、東芝株の代わりに売買されてきた。ところが東芝は今回、「当社は当該米国預託証券の発行に関与しておりません」とし、「米国証券関連法令の適用がない」ことを理由に訴訟の棄却を求めていくとしたのだ。
実は東芝は日本の会計基準を使っていない。金融庁が特例として認めてきた制度を利用して、米国会計基準で決算書を作ってきたのだ。多くの株主はADRの発行によって米当局の監督を受けていると思ってきた。それが手のひらを返したように、米国の法律は適用されないと言い始めたのだ。ADRは東芝の意思で発行したのではないと言うのなら、何のために米国基準を使ってきたのか。日本の当局の縛りから逃れ、粉飾決算を容易にするためだったとでも言うのだろうか。
