安田不動産・安田弘顧問に聞く(2-1)
--ビジネスや生活の現場でデジタル化がますます進む
「IT関連施設を多く使っている小売店であればあるほど、数少ない従業員が非人間的で冷たい表情を見せ、非人間的対応をするのはなぜか。人工知能(AI)の時代に入っていくこれから、人間性はどこに行くのか。AI時代に必要なのは、思いやり、人と付き合うコミュニケーション力といった人間性を身に付けることであり、デジタル機械と“同棲(どうせい)”することが一番大事になる。人間性、人間力を失うことは寂しい。AI時代だからこそ、人間社会の中でいさかいなく、お互いに幸せに暮らしていくための規律や道徳についてゆっくりと考えることが令和の時代の特徴であってほしい」
--グローバル化もとどまることを知らない
「グローバリゼーションの進展は仕方ないが、世界にはいろいろな国がある。多様性は認めるべきで、いいところは吸い取っても構わないが、悪いところは吸い取ってはならない。傲慢、非礼な国民性を持つ国の人々のまねをして、日本古来の良き伝統をかなぐり捨てつつある。これはグローバリゼーションの被害といえる」
先生にマネジメント教育を
--理事長を務めた安田学園では、克己心や思いやり、道徳観を備えた人間力の育成に注力した。その甲斐あって学園の教育に根付いてきたと実感する
「評価は外部に任せるが、学園は文字通り『学びの園』。記憶力の園ではない。理事長就任後、安田学園をオーバーホール(徹底的に見直す)して人間力を習得する教育に取り組んだ。生徒が学園に来て学ぶだけでなく、スポーツやクラブ活動などを通じて友達づくりを楽しむことも大切だ」
「こうした教育を担うのは先生方だが、大学を出てすぐ教職に就くので狭い世界しか知らず世の中を知らない。授業は真面目に一生懸命に取り組むが、クラス運営などマネジメントの仕方を知らない。楽しい学園生活を生徒に送らせるノウハウを持ち合わせていないわけだ。だから『東京大や慶応大に何人合格した』に話がいく。それも大切なことだが、知識競争だけではない。魅力的な人間、つまり人間力の習得に向かって生徒を指導することが大切になる」
--そのために重要なことは
「先生を改めて教える教育機関をつくるべきだ。例えば先生方が苦労するのはクラス運営。子供たちはわがままなためクラスをマネジメントできずに苦しむ。教職課程の科目では教えきれないからだ。だからクラス運営を含めて再教育することが一番大切。理事長のとき先生を集めて、安田学園をどういう学校にしていくかアイデアを出すよう求めたとき、一生懸命に考える先生がいる一方で、怠ける先生もいる。大きな声になびく先生も出てくる。『悪貨は良貨を駆逐する』わけで、中学、高校の先生向けの研究所設立は理事長時代にやり残したことでもある」
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【プロフィル】安田弘
やすだ・ひろし 学習院大政経学部卒。沖電気工業、ジャーディン・マセソン・ホールディングス(アジア)取締役、JPモルガン・アセット・マネジメント取締役相談役などを歴任。1991年5月~2018年5月安田学園教育会理事長、現在は名誉顧問。1993年6月から安田不動産顧問。86歳。東京都出身。