テクノロジー

米中露覇権争いが生む「宇宙ごみ」を回収、川崎重工「お掃除衛星」のスゴ技

 川重「防衛宇宙プロジェクト本部」で開発

 宇宙開発ベンチャーでこれまで累計150億円以上の資金調達に成功している「アストロスケール」は、磁石を使ってデブリを捕獲し、大気圏に突入して燃やす除去衛星を開発中だ。

 来年中頃に実証衛星を打ち上げる計画で、自律航行でデブリに接近し、ごみの大きさなどを診断、除去を行う実験は世界初の快挙だ。

 実験では、デブリを模した人工衛星と捕獲機を打ち上げ、実際に宇宙空間でデブリを発見できるか、つかまえて大気圏に突入させられるかなどを実証する。

 G20サミットの展示スペースで目立っていたのは、川崎重工が披露した除去衛星の模型だ。

 画像認識技術を利用してデブリに迫り、金属のアームをのばしてロケット上段など対象物をひっかけ、その後、ローレンツ力を使って、大気圏に突入させる仕組み。来年度に衛星を打ち上げる予定だ。

 同社の航空宇宙システムカンパニー防衛宇宙プロジェクト本部で技術開発を進めている。

 中国の衛星破壊実験でデブリ大量拡散

 デブリの数は現在、宇宙空間に直径10センチ以上のものが2万個以上存在し、1ミリ以上のものになると1億個以上あるとされる。

秒速7~8キロ、拳銃の弾丸より速く移動するため、人工衛星や国際宇宙ステーションに衝突すれば、被害は深刻だ。衛星を運用する側もデブリ対策に迫られており、世界では衝突を回避するために衛星軌道変更する事例が年約100回行われているというリポートもある。

 中国は2007年、地上から発射したミサイルで人工衛星を破壊する衛星攻撃兵器(ASAT)の実験を実施。大量の破片が軌道上にまき散らされ、国際的な批判を浴びた。米国と旧ソ連も、冷戦時代に衛星破壊実験を実施。1985年以降、行われていないが、宇宙ごみ問題が注目されるきっかけとなった。

 宇宙開発をめぐっては、中国の習近平国家主席が「宇宙強国」を掲げ、軍民あげて邁進。インドは7月、月面探査車を搭載した無人月探査機を打ち上げ、来月に月の南極近くに軟着陸させる計画で、米中露だけでなく、大国間の技術競争が過熱している。

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