国際情報ファイル

仮想通貨大国を目指すスイス FB「リブラ」は上陸するか

 ビル1階はIT起業家の共有オフィス。上階にフィンテック企業が入居するが、リブラの表札はない。受け付けで尋ねたら、「ここに連絡して」とリブラ広報のメールアドレスを渡された。7月、米上院公聴会でFBのリブラ担当者が追及されると、スイス情報当局は数日後、「FBに個人情報の扱いを照会中だ」と発表した。米国の動きにピリピリしているようだ。

 仮想通貨については、7月の主要7カ国(G7)財務相・中銀総裁会議が「最も高い水準の規制を満たすべき」との方針で合意。中国や韓国は「イニシャル・コイン・オファリング」(ICO)と呼ばれる仮想通貨の新規公開を禁止している。

 スイスは、国際規制の先手を打ち、独自のルールを定めることで仮想通貨取引のつなぎとめを狙う。昨年2月にはICOのガイドラインを策定。金融機関向けのマネーロンダリング防止法を援用する仕組みを作った。昨年だけで、金融当局へのICOの申請・打診は155件に上る。

 スイスがあえて独自の道をたどるのは、歴史的な中立国で、世界中のNGOが集まる国柄にも起因する。仮想通貨には、貧困層支援への期待も大きい。「リブラ協会」に参加する米NGO「女性の世界バンキング」の広報担当者は、「銀行口座を持つことのできない女性は10億人近い。リブラの将来は分からないが、彼女たちが金融に手が届くようになれば、一つの希望になる」と話した。

 仮想通貨への国際規制が強まれば、スイスは先手先手で圧力をかわし、イタチごっこが続くだろう。アルプスの小国はしたたかに生き残り策を探っている。(産経新聞パリ支局長・三井美奈)

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング