知恵の経営
供給者の思いと購入者の思い 「佰食屋」のケースなどで考える
「佰食屋(ひゃくしょくや)」というお店をご存じだろうか。京都の国産牛ステーキ専門店で、1日100食限定で、100食売り切れた時点で営業終了となるため、分かりやすくそれを店名としている。しかも驚くのは、午前11時から午後2時半とわずか3時間半の営業時間のみで売り切り、夜の営業は一切していない点だ。(アタックス研究員・坂本洋介)
代表の中村朱美氏は、お客がどんなに求めても、100食以上つくることができても、それをしない。そこには、「食の安全がささやかれる時代に、安心、安全でおいしいものを皆さまに提供したい。誰でも食べに行ける値段にもこだわりたい。そんな思いを形にしたのが、佰食屋。新鮮なものを食べてほしいから、当店には冷凍庫がありません。毎日100人分の食材を仕入れ、100人に提供する。そうすることで、新鮮で作りたてのおいしい料理を提供することができる」という思いが込められている。今では、人気が人気を呼び、全国からその味を求めてやって来るという。
また東京・吉祥寺にある「小ざさ」が売る1日150本限定のようかんも「幻の羊羹(ようかん)」と言われる。なぜ150本かといえば、品質を保つ限界量が150本だからだ。社長の稲垣篤子氏は、「小豆を一窯に3升使って、約50本のようかんができる。それを毎日3窯分作るので1日150本。先代から小豆は3升以上炊くと、この味はできないといわれ、自身もあらゆる研究を繰り返し、3升が一番いいと確信した。だから守り続けなければいけない」という思いで40年以上、早朝から長蛇の行列が途切れない光景が続く。