IPCC「気候変動と土地特別報告書」
食料の生産と消費で気候変動対策
食料を生産し、食卓まで届ける活動は、土地利用の変化に伴う排出と合わせると世界の排出量の約30%(21~37%)を占めています。食料生産が気候変動に及ぼす影響はかくも大きいのです。一方で、生産された食料のうち、25~30%が食品ロス(食べられるのに廃棄される食品)となり、無駄になっていることも指摘されました。食品ロスの多い日本は、食料を無駄にしているだけでなく、気候変動の進行にも影響を与えていることになります。
農林水産省によると、日本の食品ロスは年間約640万トンです。これは、国連の世界食糧計画による食糧援助量の約2倍にも達しています。日本の食料自給率は約40%弱ですから、日本の温室効果ガス排出量には反映されていなくても、食料輸入に伴う世界の排出量に責任があることになります。
IPCCは、食料関連の対策を3つ挙げています。1つ目は、農業や畜産のやり方を持続可能な形に改善することです。具体的な対策として、土壌の有機物を増やすことや、土壌浸食のコントロール、肥料管理の改善、水田管理など作物管理の改善、既存の耐性種の利用と耐暑・耐干ばつのための育種などが挙げられています。畜産については、草地管理の改善、家畜排せつ物管理の改善、高品質飼料の利用、改良種の利用と家畜の育種などが挙げられています。
2つ目は、食料システムの多様化です。統一された生産システムの実施や、食生活の選択などが挙げられています。実は、肉など畜産物の生産は、穀物に比べて数倍の温室効果ガスを排出します。そのため、穀物や野菜フルーツ、ナッツなどの植物ベースの食品と、持続可能なシステムで生産された畜産物をバランスよくとることで、温室効果ガスの排出を減らすことができると報告書は指摘しています。
具体的な対策としては、環境コストを食品に織り込むことなどが提案されています。研究では、「肉税」や「野菜や果物の助成」のような形が提案されています。こうした食生活の変化によって、2050年に年間7億~80億トンもの排出削減の可能性があると示されました。