寄稿
IPCC「気候変動と土地特別報告書」
3つ目が、食品ロスを減らすことです。2010~16年の間に、世界全体の食品ロスは世界の温室効果ガス排出量の8~10%も占めました。食品ロスを減少させる政策は、2つ目の食生活の変化を含め、気候変動の緩和に役立つだけでなく、適応にも寄与し、土地劣化や砂漠化を減少させ、さらに貧困を減らし、人々の健康を改善すると指摘しています。土地劣化については、劣化を招く農業のやり方に環境コストをかけることで、より持続可能な土地管理に誘導することができると提案されています。
これらを大胆に言い換えると、(1)農業や畜産のやり方を持続可能な方法に変える、(2)特に先進国で、食べるものから集約農業によって生産された畜産物や乳製品を減らし、植物ベースに変えていく、(3)食品ロスを徹底的に防ぐ-ということになります。これらを実施すれば、気候変動を抑制して、より健康になり、貧困や飢餓撲滅にも貢献することになります。
(2)の肉食を減らすのは、日本より肉の消費が多い欧米により当てはまることかもしれませんが、(3)の食品ロス防止は私たち日本人にとって喫緊の課題です。
化石燃料由来のエネルギー消費を減少させていくことが、気候変動の最重要対策であることに違いはありません。しかしそれと同時に、土地に関する対策も進める必要があることを、今回のIPCC報告書は改めて私たちに示しているのです。
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【プロフィル】小西雅子
昭和女子大学特命教授。法政大博士(公共政策学)、ハーバード大修士。民放を経て、2005年から温暖化とエネルギー政策提言に従事。