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寄り添うメガネ提案に活路 技術・接客力磨き格安チェーン対抗

 メガネをかけたことで、肩凝りや吐き気を感じる-。合わないメガネが引き起こす困りごとに応えるメガネ店が人気だ。最適なメガネを提供するため、高度な知識と技術を習得したスタッフが接客したり、日本では珍しい両眼視検査を行ったりして視機能低下に悩む人の満足度を高めて、格安チェーン店に奪われた顧客を取り戻している。

 価格競争で失敗

 「家族で使っている。今日も手ぶらで来た」

 JR総武線小岩駅から徒歩10分強、商店街を抜けたところにあるビジョンメガネ小岩店(東京都江戸川区)。メガネの調整に訪れた主婦はかけ心地に満足しながら話した。応対した北尾義人店長は「メガネを売った後も定期的に連絡して具合を聞く。よく見えるだけでなく、生活が楽になったとお客さまから言われたいから」と笑う。

 北尾氏は、顧客が抱える問題を発見し解決する「メガネのマエストロ」SS級ブロンズの称号を持つ。同店を含め全国100超の専門店を運営するビジョンメガネ(大阪市西区)が販売スタッフの知識・技術を可視化するため昨年2月に導入した社内資格制度の試験に合格。現状では最上位の資格を得た。

 「JINS(ジンズ)」や「Zoff(ゾフ)」など格安チェーンの台頭に、同社も価格競争に巻き込まれていったん参戦したが、うまくいかず2013年11月に民事再生法の適用申請を余儀なくされた。そこで顧客に徹底的に寄り添うことで最適なメガネを提案する差別化戦略が勝ち残りに欠かせないと判断した。この直前に社長に就いた安東晃一氏は「われわれの強みはこれまで培ってきた技術力や接客力と気づき、創業の精神に立ち返った」と振り返る。

 資格制度は研修を受けることで、店頭に立つ上で必須のS級からSS級(4段階)、教育・指導を担えるSSS級と昇級。こうして生まれたマエストロは、メガネのコーディネーターとして接客にじっくりと時間をかける。北尾氏は「以前は視力測定で終わったが、今は仕事や趣味、日ごろの悩みなどを細かく聞き、ぴったりのメガネを提案する」という。

 マエストロ効果による顧客満足が他社との差別化をもたらし、業界平均(約2万5000円)より約1万円高い販売単価を実現。格安チェーン店に流れた顧客も戻ってきた。

 安東氏は「知識・技術に裏付けされた提案なのでスタッフは自信をもって勧められる。お客さまも納得して購入するのでスタッフのモチベーションも高まる」と強調する。

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