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経営改革の切り札、デジタルトランスフォーメーションが生み出す価値

 また、商用サービスが3月に始まった、第5世代(5G)移動通信システムの活用もDXのカギを握りそうだ。通信会社と組んで、超高速・大容量で低遅延の通信基盤をいかに活用するかが課題となる。

 もっとも、日本企業がDXに本腰を入れ始めているにもかかわらず、革新的な製品やサービスは、それほど創出できていないのが実態だ。

 経産省のDXリポートでは、DX停滞の理由について「経営者のビジョンや戦略の不足」「IT人材の不足」「老朽化した情報システム」などの要因を挙げている。さらに、国内でDXが進まない場合、競争に勝てなくなって令和7(2025)年以降に最大で年間12兆円もの経済損失が生まれると試算し、これを「2025年の崖」と呼ぶ。

 デジタル競争の敗者にならないためにも、スピード感を持ったDXへの取り組みが必要になる。

 米調査会社IDCの予測によると、2020年のDXの世界市場(出荷額ベース)は前年比10%以上増加し、1兆3000億ドル(約139兆円)超になる見通しだ。新型コロナウイルスによる経済縮小の影響を受け、増加率は19年の約18%に比べると鈍化するが、製造、教育、金融など多くの分野で支出の伸びが続く。22年には2兆ドルに迫る水準にまで拡大する見込みだ。

 DXが進展すると、スマートフォンやIoT(モノのインターネット)機器を通じて大量のデジタルデータが蓄積される。こうして得たビッグデータをAIが解析することで、顧客のニーズや行動予測をより正確に把握し、マーケティングや営業活動などに生かせるようになる。DXの推進は今後の企業の成長を左右する。(万福博之)

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