予算獲得の手段で形骸化、意義問われる「骨太方針」
【経済♯WORD】骨太方針
政府の経済財政運営の指針「骨太方針」が今年も閣議決定された。新型コロナウイルスという「100年に1度」の厄災を踏まえ終息後の新しい国家像を議論する絶好の機会だったが、分量を大幅に絞った割には既視感のある施策が並び、「骨太」とは程遠いイメージだ。誕生から20年、関係省庁と業界団体による予算獲得の手段として形骸化し、存在意義が問われている。
「去年のことは覚えていないと思っているかもしれないが、そうはいかない」
公明党の石田祝稔(のりとし)政調会長は7月9日、記者団に対して怒りをあらわにした。
この日、骨太方針の原案を審議する党の会合では、防災・減災の取り組みに関する記述が昨年の方針を“切り張り”したと大荒れになった。党の提言を反映していなかったことも火に油を注いだ。政府は慌てて防災分野の記述を大幅に追加し、原案段階で日の目を見なかった国土強靱化を「大きな柱」(西村康稔経済再生担当相)に位置付けた。
「ばかにしている。一字一句同じ文章を載せる神経が分からない」(石田氏)との嘆きが骨太方針の置かれた現状を物語っている。官邸主導で行財政改革を進めるエンジンだったのは今や昔。最近は毎年度の予算編成に要望を盛り込ませたい業界団体や業界の声を代表する自民党族議員の陳情を反映させる受け皿としての側面が強くなっている。
安倍政権で比重低下
骨太方針を策定する経済財政諮問会議は、森喜朗政権下の平成13年、省庁再編に併せて発足した。当時の宮沢喜一財務相が「(予算は財務省に任せて)骨太の議論をしてほしい」といった趣旨の発言をしたことが呼び名の由来とされる。現在の正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」だ。
このころの予算編成は族議員や各省庁の影響力が大きく、官邸ではなく、省庁間の利害調整をする財務省が編成の実権を握った。骨太方針は予算に首相の意向を反映させようと、各省庁が毎年度の予算を要求する際のルールである概算要求基準を作る前に官邸主導で政策の方向性を決める舞台回しとして用意された。
宮沢氏の発言は「骨太」の名のもとに予算規模などには触らせず主導権を確保したい財務省の思惑がにじむ。実際、諮問会議の実質的な振り付けは同省が担った。
ただ、小泉純一郎政権では竹中平蔵経済財政担当相のもと官邸主導による構造改革の象徴となった。民間議員が提言ペーパーで流れを作り、首相の指示で裁定を下す。こうした会議の流れは現在も受け継がれる。
一方、24年末の安倍晋三政権発足後は、政策立案の主導権を経済産業省を母体とした官邸官僚が握った。内閣官房に日本経済再生本部と未来投資会議が設置され、成長戦略策定の司令塔機能を担っている。
成長戦略実行計画は骨太方針と同時に閣議決定されており、重複する政策も多い。今年は新型コロナウイルス感染症対策本部などコロナ関連が加わったことで官邸会議が増えた。政策決定の力学が外部から分かりにくくなった上、骨太方針の比重が相対的に低くなっているのは否めない。
デジタル化前面に
コロナ禍で世界経済が大恐慌以来とされる歴史的落ち込みを見せる中、骨太方針では期待された新たな国家像や東京一極集中の是正といった議論は深まらなかった。こうした大きなテーマは、経済財政諮問会議ではなく未来投資会議のメンバーを拡充して検討する。
代わりに前面に出たのはデジタル化だ。押印は行政手続きで原則廃止される。行政手続きをオンラインで完結させるためマイナンバー制度を抜本的に改善。キャッシュレス化対応の店舗が決済事業者に支払う手数料の高止まりにつながるとして銀行間の送金手数料も見直し、脱現金の動きが中小店舗にも浸透しそうだ。