価値共創

ベンチャーキャピタル老舗・ジャフコ “黒子”として「リソース提供に全力」

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 スタートアップの「共同創業者」

――老舗のVCとして、出資してきたスタートアップ企業に対する思いをお聞かせください

北澤氏:

 日本や各国で新しい産業を作るような会社と成長をしていく、というイメージを抱いています。共同創業者に近い立ち位置として関わっていく思いで、しっかりと支援していくことを意識してきました。

 あくまでもスタートアップが主役で、ジャフコは黒子的な立場ではありますが、「スタートアップが成功するために足りないリソースは全部私たちが補うのだ」という発想で、全力でリソースを集めています。それは資金だけにとどまらず、例えば人を集めるということであれば採用であったり、大企業がなかなか受け入れてくれないという事情があるなら、営業のサポートであったり、あらゆる支援です。

 未上場の市場規模は2011年は800億円でしたが、2019年には5000億円近くになりました。日本ではまだまだ、VC自体が成長産業だと思っています。VCは今後、どのように進化し、どのような進化を遂げるべきなのか。VCの老舗としてずっと考え続けていかなければならないことだと思っています。

――2008年のリーマンショックを境に、出資先を大幅に減らす代わりに1社あたりの投資額を増やしたようですが、なぜこのような変化があったのでしょう

北澤氏:

 なぜ変えたか、ということですが、一つはリスクヘッジです。未上場企業の場合、出資先の会社が「難しいな…」という状態になったとして、上場株のようにその日のうちに株を売却できるかといえば、できません。そこで、私たちが投資先の経営にコミットし、積極的に関わる方がリスクヘッジになるという考え方です。

 その転機が、実体経済が大きく、長期にわたって落ち込んだリーマンショックというタイミングでした。少額分散投資では、1社1社に十分な支援が届かず、多くの企業が経済環境の変化に耐えられなくなります。リソースを集中させる方が、わたしたちの価値をより提供できると考え、投資社数を絞り1社あたりの投資額を増やす方向にシフトしたという経緯があります。

――ジャフコが出資したIT企業WACUL、ココナラ、Appier Holdings、ビジョナルの4社が今年に入って相次いでIPOを実現しています。出資先の企業はコロナ禍にあっても堅調のようですね

北澤氏:

 私たちが出資した会社が、このタイミングでしっかりIPOに至ったというところに尽きます。実際、スタートアップに投資しているタイミングは、起業から間もない頃ですので今から5、6年前です。結果としてこのタイミングで上場したというのが、表現として正しいかなと思います。なぜこのタイミングのIPOになったのか。コロナ禍で大企業も含めたデジタルの浸透が数年前倒しになったという理由も大きいかと思います。

 コロナ禍によって、起こるべくして起こることが促されたという側面があると思っています。例えば、働き方改革もそうです。リモートワークの普及にしても、いずれ起きることだったといえます。それらは、産業変革を目指しているスタートアップにとってターゲットでした。コロナ禍がこうしたスタートアップに対してネガティブに働かなかった理由はそういうことかなと考えます。

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