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アマゾン頼みにはリスクあるが…最大手の講談社がついに方針転換した“深刻な事情”

 ■「中吊り広告が消えた…」加速するデジタルシフト

 出版界では、暗い話が続く。

 この秋には、電車の中吊り広告に小さな異変が起きた。「車内の風物詩」とも言われた週刊誌主要4誌の中吊り広告がすべて姿を消したのだ。

 『週刊文春』が8月で、『週刊新潮』は9月いっぱいで取り止めた。既に、『週刊ポスト』は15年末、『週刊現代』も17年に撤退している。

 その理由は、乗客がスマートフォンに熱中して中吊り広告に目がいかなくなったうえ、駅の売店が激減して中吊り広告を見て雑誌を購入する気になっても買うに買えず、売り上げに結びつかなくなったからという。

 印刷メディアからネットメディアへ移行する、ライフスタイルの変化を物語る一事と言えるだろう。

 書籍や雑誌の販売額がピーク時の半分以下に落ち込み、返品率は書籍で3割程度、雑誌は4割程度に高止まりするのも致し方ないかもしれない。

 ■電子書籍は急成長「縮む出版市場の“ささやかな光明”」

 ただ、縮む一方だった出版市場だが、コロナ禍の巣ごもり需要もあって、少し事情が変わってきた。

 電子書籍が急成長し、紙媒体も下げ止まりの兆しが見え、ささやかな光明がさしてきたのだ。

 全国出版協会・出版科学研究所によると、紙媒体と電子書籍を合わせた販売額は、2019年に前年比0.2%増と、前年をわずかながら上回り、20年には同4.8%増の1兆6168億円と、2年連続のプラスを記録した。

 さらに、21年上半期は、前年同期比8.6%増の8632億円となり、回復トレンドが続いている。

 牽引したのは電子コミックを中心とする電子書籍で、同24.1%増の2187億円と急伸し、出版市場全体における占有率は25.3%にまで膨らんだ。

 一方、紙媒体も、同4.2%増の6445億円となり、と久々にプラスに転じた。内訳は、書籍が3686億円(同4.8%増)、雑誌2759億円(同3.5%増)。数字は取次ルートのみのため、直販を含めるとさらに大きくなりそうだ。

 ■大手は好調、二極化が進む出版市場

 同時に、出版界の構造変化も顕著になってきた。

 多くの出版社が苦しい経営を余儀なくされている一方で、大手出版社は好業績に転じているのだ。

 講談社は、『進撃の巨人』のロングヒットに支えられ、20年11月期の決算は、売上高1449億6900万円(前年比6.7%増)、当期純利益108億7700万円(同50.4%増)と大幅な増収増益となり、野間省伸社長が「21世紀に入って最高の数字を出せた」と胸を張った前期決算さえも上回った。特筆すべきは、電子書籍と権利ビジネスなどの事業収入が初めて紙媒体の売上げを上回ったことで、業容転換が進んでいる実態が明らかになった。

 集英社も、『鬼滅の刃』『呪術廻戦』といった大ヒット作に恵まれ、21年5月期決算は売上高2010億1400万円(前期比31.5%増)と、初めて2000億円を突破。当期純利益も457億1800万円(同118.3%増)となり、大幅な増収増益を記録した。

 小学館も、21年2月期の決算は、売上高こそ943億1600万円(前年比3.5%減)と微減ながら、当期純利益は56億7300万円(同44.5%増)と大幅増益となった。

 出版界全体が苦境に陥っていたころとは違って、電子コミックやライツビジネスが寄与し始めた大手出版社と、デジタル化が遅れた中小出版社の二極化が鮮明になってきた。

 ■アマゾン化でじわじわ増える「一人出版社」

 もう一つ目立ち始めたのが「一人出版社」だ。

 取次会社を通さず書店と直接取引を展開したことで知られる出版社ディスカヴァー・トゥエンティワンの社長を長く務めた後、21年5月に一人出版社「BOW&PARTNERS」を起こした干場弓子氏も、その一人。

 従来の流通システムについて「1985年の創業時、大手の取次会社は、新興の小さな出版社には冷たかった。だから、書店との直接取引に活路を求めた」と、早くから構造的問題があったことを指摘していた。

 ところが、アマゾンのネット通販や電子書籍Kindleという新たな流通ルートが生まれ、書店も直接取引に対する抵抗感が薄れたこともあって、出版環境が一変した。

 このため、戦後の出版全盛期を支えた編集者たちが、退職後に「出したい本、出すべき本」を出版しようと起業するケースが少なくなく、儲けようとしなければやっていける可能性は高いという。

 もっとも、アマゾンを当てにしすぎると、倉庫や発送業務が必要になって一人では手に負えなくなるジレンマを抱えることになるので悩ましい。

 ■続く覇権争い…講談社“二正面作戦”の中身

 出版社も、アマゾンが既存の流通ルートを侵食していく事態を、手をこまぬいてみているわけではない。

 講談社、集英社、小学館の大手出版3社は5月、総合商社の丸紅と連携して流通事業に乗り出す方針を発表した。

 年内にも共同出資会社を立ち上げ、人工知能(AI)を用いた効率的な配本や、RFID(無線自動識別)タグを活用したリアルタイムの在庫管理システムなどを提供するという。中小出版社の出版物の流通も請け負う方針で、出版界全体の書籍流通のデジタルトランスフォーメーション(DX)を担う構えだ。

 KADOKAWAも、既に自社施設で印刷・製本し書店への直接配送する仕組みを導入しており、書店との直接取引で2日以内に届けるという。

 いずれも、取次会社に代わる流通ルートの構築を目指すもので、アマゾンへの対抗意識がむき出しである。

 アマゾンがさらに拡大するのか、出版社が巻き返しを図るのか。当分は、せめぎ合いが続きそうだ。

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