■「アマゾンリスク」を懸念する声も
じわじわと「アマゾン化」が広がる中、中小出版社を中心に、アマゾンへの依存度は高まる一方だ。
だが、「アマゾンに任せれば、すべてうまくいく」と期待するのは早計にすぎる。
アマゾンに流通を任せるということは、出版社の生殺与奪を委ねることにほかならないからだ。
「アマゾンが書籍取り扱いの手数料を上げたら、経営が成り立たない出版社が続出する」「小規模の出版社では、アマゾンに太刀打ちできない」「地方の出版社がつぶれると、地方文化の担い手がいなくなる」など、「アマゾンリスク」を懸念する声は少なくない。
ネット通販の楽天市場に依存していた全国の小売業者が、楽天に「手数料を上げる」と言われても抵抗しにくい事態が思い浮かぶ。
アマゾンの利便性に浸り過ぎていると、気がついた時には身動きが取れなくなっているかもしれない。
だが、出版界が考えるべきもっとも大切なことは、読者目線である。紙媒体であれ電子書籍であれ、書籍や雑誌を入手する利便性が高まり、だれもが奥深い出版文化を享受できるようになることが重要だ。
出版社とアマゾンのバトルや、取次会社や書店の浮沈は、そうした視点で見つめることが求められる。
水野 泰志(みずの・やすし)
メディア激動研究所 代表
1955年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。中日新聞社に入社し、東京新聞(中日新聞社東京本社)で、政治部、経済部、編集委員を通じ、主に政治、メディア、情報通信を担当。2005年愛知万博で万博協会情報通信部門総編集長。現在、一般社団法人メディア激動研究所代表。日本大学法学部新聞学科で政治行動論、日本大学大学院新聞学研究科でウェブジャーナリズム論の講師。著書に『「ニュース」は生き残るか』(早稲田大学メディア文化研究所編、共著)など。
(メディア激動研究所 代表 水野 泰志)