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日本の宇宙ビジネス前途多難 H2Aロケット“軌道”不透明
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宇宙航空研究開発機構(JAXA)の水循環変動観測衛星「しずく」と、韓国の多目的観測衛星「アリラン3号」を載せたH2Aロケット21号機が18日、種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げられ、ともに軌道投入に成功した。初めて商業受注した海外衛星の打ち上げが成功し、日本の宇宙ビジネスは新たな一歩を踏み出した。ただH2Aは、コスト競争力や打ち上げ回数などで海外勢に見劣りし、ビジネスとして“軌道”に乗るかは不透明な状況だ。
「H2Aの信頼性に自信を深めているが、打ち上げ費用が国際標準より高い。コストダウンに最大限の努力をしたい」
ロケット製造と打ち上げを担った三菱重工業の大宮英明社長は18日の記者会見でこう話し、打ち上げ成功の興奮に包まれる中でもロケット事業の今後の展開に慎重姿勢を崩さなかった。
三菱重工がロケット事業を維持するには、生産能力の上限である年4機の打ち上げが必要。2~3機は国とJAXAからの「官需」でまかなえるが、残りは民間から獲得するしかない。
H2Aの打ち上げ成功率は95.2%と高いが、打ち上げ回数は200回以上を誇る欧米企業に大きく水を空けられている。ロケット専用の部材を使っているためコストも高く、三菱重工に打ち上げ業務が移管された2007年以降、100件もの商業打ち上げの打診があったが、受注できたのは今回の1件だけだ。
H2Aの打ち上げ費用は通常85億~100億円。欧州のアリアンロケットやロシアのプロトンロケットの約80億円に比べて割高で、米ベンチャー、スペースXが開発した約43億円の「ファルコン」の倍以上だ。
今後、インドや韓国勢も低価格のロケットで打ち上げ事業に参入を計画しており、「H2Aがコスト面でさらに劣勢を強いられるのは必至」(アナリスト)とみられる。
このため、三菱重工はH2Aのコストを2020年までに半分に減らす方針。アルミ部品を、同社が開発・製造中の国産小型ジェット機「MRJ」と共通化するほか、電子部品は、市販のカーナビシステムを応用して「ライバルに強力に対抗する」(浅田正一郎・宇宙事業部長)。
コスト競争力を高めて狙うのは、世界で年20機前後の需要がある静止衛星。現在はシェアの半数を欧州のアリアンスペースが握り、残りをロシアや米国などが奪い合う激戦区だ。
三菱重工は、モンゴルやチリなど新興国が計画する災害対策用衛星などを受注し、市場の一角に食い込みたい考えで、政府も、宇宙事業の振興に重い腰を上げ、近く「宇宙戦略室」(仮称)を設ける。ただ各省庁の足並みはそろっておらず、日本の宇宙ビジネスの前途は多難だ。(今井裕治)
製造国 全長 打ち上げ能力 成功/打ち上げ回数 成功率
H2A 日本 53メートル 4.0~6.0トン 20/21 95.2%
H2B 日本 57メートル 約8トン 2/2 100%
アリアン 欧州 54~60メートル 6.8~12トン 194/205 94.6%
デルタ 米国 63~71メートル 4.2~13トン 344/362 95.0%
アトラス 米国 58~60メートル 4.9~8.7トン 288/327 88.0%
プロトン ロシア 57メートル 6.9トン 333/375 88.8%
長征 中国 53メートル 4.9トン 153/163 93.9%